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夏の章三 夏ぐれ
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二人を乗せた車は、滑るように市内を走っていた。
時折、対向車のライトが車内を照らし出す。強い光は暢宏の顔に陰影を作り、表情を読み取ることができない。
長谷川はドア側にもたれ掛かり、外の景色と暢宏を交互に見ていた。
車内では一言も交わさず、時間と道程だけが進んでいる。
「……もっと罵倒されても良かったのに」
先に口を開いたのは、長谷川の方だった。
「罵倒されたかったんか?」
「…それくらい酷いことしましたから」
「誰にでも失敗や、間違いはあるやろ」
「失敗や間違いじゃありません。謀ったんです。許されることじゃない」
「もう済んだことや。真人がそうなった経緯に俺も絡んでる。すまんかった。真人が何を考えてるか、気づかなあかんかった」
「……」
長谷川は暫く黙った後で、大きな溜め息ついた。
ずれがある、と思った。
だが、明確に断言できない以上、そうじゃないと言いたい気持ちを抑えるしかなかった。
「奥さん、暢宏さんこと、『のぶさん』て言うんですね」
「ん? うん、そうやなぁ」
「こんな言い方、好きじゃないけど何か狡い…。女性ってだけで結婚できて、子供もいて、あなたの信頼まで得て……。たとえ離婚しても、彼女に対する信頼は消えないんじゃないですか?」
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