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夏の章三 夏ぐれ
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長谷川は車のガラスに自分の顔を写し、静かに呼吸を整えた。
暢宏に対して、見境なく声を張り上げたのは初めてだった。
チリチリと心の奥底で炎が燃えている。沸騰した血液が、血管を通して全身を巡っているようで、じわじわと熱い。
心臓は聞こえそうなくらい脈打ち、呼吸をする度に身体が震えた。
こんなにもみっともない自分と比べて、暢宏の冷静さは憎たらしいとさえ思った。
未だ、目頭が熱く、目が潤む。暢宏の顔をまともに見ることが出来なくて、ぼんやりと滲んだ景色をずっと見ていた。
ウィンカーの音が車内に響き、車は長谷川のマンションの駐車場へと入っていく。
「?」
送られるだけだと思っていた長谷川は、思わず暢宏に声をかけた。
「家に帰らないんですか?」
「帰ってきたやん。他にどこに行くねん」
暢宏は、慣れた手つきで車を所定の位置に止め、エンジンを切った。
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