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夏の章三 夏ぐれ
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「奥さんと話さなくていいんですか?」
「何を?」
「息子さんのこととか」
「日出子と話すことなんて何もないやん。父親としての在り方を考え直すのは俺一人で出来るし」
暢宏が車を降りると、長谷川も慌てて車を降りた。
「でも……」
「真人のもんやろ?」
「え?」
暢宏が立ち止まり、親指を立てて己れを指した。
「真人のもんや」
「……暢宏さん」
「ん?」
「……サムいです。って言うか、恥ずかしいんで止めて下さい。何でそんなしれっとした顔で言えるんですか?」
「しれっとしてるからや」
「そのまんまじゃないですか。大阪人ならもっと巧く返したらどうです?」
長谷川は、耳まで真っ赤にしながら、暢宏の横をスタスタと歩いていった。
「おいおい、大阪人がみんな芸人やと思ったら大間違いやぞ。俺は箕面のボンボンやねんから」
「自分で言わないで下さい。だいたい箕面がどんなとこなのか、俺知りませんから」
「なら一緒に行くか? 市内と違ってゴミゴミしてへん、いいとこやで」
「……は」
一体どこからその発想が浮かんでくるのか?
数分前まで、あんなに言い合いをしたというのに。
そんなことすら過去のことと、開き直っているのか、たわいもない抗いだと、余裕を見せているのか、暢宏は嬉しそうに微笑んでいる。
悔しくて、長谷川は首を横に振った。
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