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初夏、付き添い
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部室のドアに鍵を掛ける北野の手元を眺めていた。
二人で並んで歩き出してからも、目を落とすと彼の手が目に入る。
綺麗な手だ。男だが何か手入れでもしてるのだろうか、と思わせるほど。
ー手が綺麗といえば、祐樹くんもだな…。
黒板に向かい、あの綺麗な手で白い線を書き出す姿。想像してみてにやけていると、北野が訝しげに顔を覗き込んできた。
「瀬戸せんせー、ちょっと変わってますよね」
「何が?」
大体の人間は瀬戸より背が低い。同年代の生徒たちの中でも一際背の低い北野は瀬戸を見上げながら続ける。
「こんな風に大人の人と二人で歩いたりするときって、大人のほうが頑張って話題振ってきたりするのに、せんせーはしないから」
普段なら自分だって生徒と二人きりだと緊張するし話題も必死に探す。だが今日は、祐樹のことを考えてかなりぼーっとしてしまっていたかもしれない。そうだとすると北野に悪いことをした。
部室棟の門のところにある事務に鍵を返して退室時間を記入すると、北野が右手を指して言った。おそらく近くに下宿しているのだろう。最寄りの駅への道とは反対側だ。
「僕、こっちです。せんせー、どっちですか?」
「俺は逆」
そうですか、じゃあさよなら。と、去ろうとした北野がはっとしたように振り返った。
「せんせー、ゴールデンウィークのどっか空いてません?」
完全な不意打ちだったので、訳も分からず曖昧に頷いて見せた。
「初日は空いてたはずだけど…」
「無理言って申し訳ないんですけど、もし免許持ってるなら連れていって欲しいところがあるんです」
「…え?」
友達も何人か一緒になっちゃうんですけど、と申し訳なさそうに続け、最後にこう言った。
「あの、化石掘り……なんですけど」
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