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春、出会い
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急いで次の授業の教室を確認し、教科書やその他諸々をプラスチック製の背の低いかごに突っ込んで席を立った。三年F組、職員室と同じ階で良かった。
幸いなことに午後の授業は、生徒が各自で英語で書かれた本を読んで感想を書くだけの簡単なものだったので、少し遅れて教室に入っても問題は無かった。早歩きする必要なかったかな。そんなことを考えていると、3人の生徒が申し訳なさそうに教壇のところへやってきて「本を借りてくるの、忘れちゃって…」と言った。
「そんなこと言われてもなあ、困るんだけど」
本当に参った、という顔をする。生徒は視線を足元に落とす。
「都合良くこの場に本がある訳が…」
一人がため息をつく。こいつ、後で俺の悪口言うつもりだろ。気にせずにかごに両手を伸ばす。
ごそごそと中を探り、そうっと目的のものを取り出す。よし、今だ。
「あるんだなあ、これが!」
三冊の本をそれぞれの目の前に差し出す。きょとんとする生徒たちのアホ面。あー、面白い。
「次から忘れないように」
とはいうものの、ここは学校だ。二階の教室から図書館まで5分もかからないだろ、何必死になってんだか。
中学生を揶揄って反応を楽しむのはやめろ、と黒田には良く言われる。そのうち痛い目見るぞ、だって。先輩風吹かせやがって。
生徒は皆静かに読書を始めた。少々暇なので時間割り兼スケジュール帳にしているダイアリーを取り出す。次は6限。6限、金曜日の6限ー、ん?ロングホームルームか。学級活動、今週は何にするか決めてたっけ。あ、そうだ。今週は講堂でゲストがなんか話すんだっけ。
そこまで考えてダイアリーの今日のページに挟まっているメモに気が付いた。祐樹の几帳面な文字でこう書いてある。
6限、ゲストスピーチ
大学講師 瀬戸渉(せとわたる)
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