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春、集い
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「東、お前ちゃんと飲んでるかあ?」
すっかり出来上がった黒田が祐樹の肩をバシバシと叩く。なんだこの酔っ払いは。じゃなくて、何この状況。
数時間前、ホームルーム終了後に生徒たちはそれぞれの自宅もしくは部活などに向かい、祐樹も職員室へ戻った。
職員室では、何やら黒田が教頭である田口と楽しげに話していた。田口がちら、とこちらを見る。
「やあ、東くん、今晩空いてるかな。黒田くんと瀬戸くんと飲みに行くんだけど、君もどう?」
まーた飲みに行くのか。仲良いし暇だな、二人とも。黒田は祐樹より4歳年上ではあるが、この学校に勤めはじめたのは祐樹より一年早いだけだ。実は一浪して大学に入ったらしく、田口は予備校時代の恩師なのだという。この学校に採用されたのも新卒のときではなく、非常勤講師二年目で田口と再会し、拾われたんだとか。
ん?まって、さっきなんて言った。黒田くんと、瀬戸くん?セトクン?ウチには瀬戸なんて教師はいない。つまり瀬戸といえば……。は?
小さく吐いた溜め息は二人の陽気な話し声にかき消され、祐樹の飲み会への参加は半ば強引に決定された。
仕事をいくつか片付け、7時前に田口や黒田とともに学校を出た。連れてこられた高そうな居酒屋で個室に通される。四人掛けの掘りごたつ。黒田と田口が隣り合って座り、祐樹は黒田の向かいに座った。
数分遅れて、アイツが到着した。
「どうも、田口さん。あ、はじめまして」
瀬戸はどうやら田口とは知り合いらしく、彼に小さく会釈した。それから初対面の二人に視線を向ける。
「瀬戸です」
知ってます知ってます、顔も名前も略歴も。さっき聞いたばっかだし。ムスっとしている祐樹を他所に、黒田も自己紹介する。
「黒田です。今日の講演良かったです、本当に」
目を輝かせて感想を述べ、そのまま顔を祐樹に向けてジロリと睨む。挨拶しろってことね、わかりましたよ。しないわけねーし、さすがに。
「あ、東です」
あれ?ちょっと声震えた。…というか。何、そんなじっと見てんの。
「……」
数秒間、瀬戸と目が合って離れなかった。いや、早く目えそらせよ。
「やだなー、二人、何見つめ合ってるんだ。さ、何注文する?」
田口の大きな声で瀬戸の視線が離れていく。
なんだこいつ。
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