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春、ほろ酔い
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急遽友人になることとなった瀬戸と他愛もない話をしているうちに駅に着き、改札をくぐってホームに降りた。
祐樹の家の方面へ向かう電車が先に到着し、祐樹が乗り込むとすぐに発車した。
電車のドアが閉った直後、ホームで瀬戸が小さく手をあげるのが見えた。手を振ったり微笑んだりするのは恥ずかしくて気が引けたので、ぐっと口を結んで目を逸らしてしまった。ごめん。
発車してしばらく経ってからスマートフォンの電源を入れ、イヤフォンのプラグを差し込んだ。電車の中でいつも聴いている洋楽をかけ、そのまま画面を見つめているとメッセージアプリの通知が届く。
『黒田:あの後二人で何話して帰ったのー?無愛想なクソガキ教師の東くん』
うっぜえええ。普通に他愛もない会話したわ。つか友達になりたいって言われたし。どうせ気まずくなったと思ってるんだろ。最初は俺もそう思ってたけど。
そして、そこでふと気がついた。
あれ、瀬戸さんと連絡先の交換とかしたっけ?いや、してないな。じゃあ友達になるとか言っても単なる口約束に過ぎなくて、連絡とる手段もなくて、つまりもう会えないかもしれなくて。
チラッと田口の顔が浮かぶ。あの二人は知り合いだろうから、連絡先も絶対に交換してる。
それでもあれだけ田口の前で瀬戸に対する敵意のようなものをだだ漏れさせていた以上、自分から連絡先を訊くなんてできない。
まあいいか。会えないなら会えないで別に。上司にストーカーだと思われるくらいならな。
社会人になってからはおそらく初めて、勤務先以外で仲良くなった(のか?)人物であるだけ名残惜しくはあった。それでも自分に言い訳するのは得意なので、適当に折り合いをつけることにした。
もしかしたら、また会えるかもしれないし。
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