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春、眩暈
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土曜日には通常授業はなく、午前に数学と国語、午後に英語の特別講習が高校生を対象に行われているのみだ。特別講習は学級の枠組みを超え、レベルごとにクラス分けがされている。授業を受ける生徒の学力にばらつきがない方が教えるのは楽だ。普段同じクラスの人ばかりではないので、私語も少ない。
祐樹が特別講習を受け持っている五年生(高二)の高レベルクラスが使う教室では、お昼前には黒田が国語を教えている。
昼休み、特別講習を終えた黒田が職員室へ戻ってきた。祐樹が机で作業を続けているのを見ると、「飯は?」と訊いてくる。
「今日は良いです」
作るのは面倒で普段から滅多にしないし、今日はその辺で買ってくるのを忘れた。その上、土曜日なので学食は閉まっている。
「ははーん、飯買うの忘れたんだな〜?」
黒田のヤツ、声でけえ。祐樹の目の前に座る新任の大島がその声に反応した。
「え、東先生、食べる物ないんですか?」
大島加奈とかいうこの新任教師は、顔は良いが性格に少々難があると他の女性教員たちから遠巻きにされつつある。気の毒に、と思わなくもないけど。
「ない」
「私のお弁当、手作りなんですけど、もし嫌じゃなければ食べます?美味しいですよ」
まあ、難があると言っても多少押しが強い程度と祐樹は認識しているのだが。それに、何があるというのなら自分の性格の方がよほど。
「いい。本当にお腹空いてないから」
「そうですか。本当にいらないんですか?じゃあいただきまーす」
事実を告げると、相手は残念そうなそぶりも見せずにさらっと流し、すぐにその弁当を食べ始めた。
それにしても腹減らねえな、でも講習が始まるまでには何か腹に入れとかねーと。グラノーラバーとか?つくづく女子か、って感じ。
隣から顔を覗き込んでくるうざい先輩。
「おい、大丈夫か?お前、顔やべーぞ」
失礼だな、黒田。これでも昨日はイケメン完璧超人に可愛いって言われたんですぅ!というか、今の一言で気持ち悪くなってきたかも……。
見た目に不調が出ていると知らされると、今まで特に気にならなかった程度の怠さや吐き気が蘇ってくるような気がした。
それと、もう一つ。瀬戸の顔を思い出した。
こんな具合悪いときでも、あの超絶ハイパーイケメンスマイルを見たら吐き気とか吹っ飛びそう。一言、「大丈夫?」とか言ってもらえれば、きっと。
何考えてんだ、自分。気持ち悪い。今自分を襲っている吐き気よりも、自分自身が気持ち悪い。恋する乙女かよ、イケメンに一目惚れかよ。
は?いや、ないないない。絶対に無い。
「何か食べないとだし、コンビニでも行って軽いもの買ってくっかな…」
と、立ち上がった。
……つもりだった。
あれ?
「おい!東!!お前ほんとに大丈夫かよ!?」
天井と床が逆さまに見えた。黒田の叫び声が聞こえた。
体のどこかを、床に強く打ち付けた。
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