アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
春、早退
-
最初は平気かと思ったが、歩くたびに怠さが増して足を引きずるようにして進んだ。
何度目かの交差点で立ち止まると、ほんの少し膝がガクガクと震えていた。
再び歩き出した祐樹は、すれ違う人々がチラチラと視線を寄越すほどにはふらついていた。
「はあ、…はあっ」
次第に息が上がり、視界が霞んでゆく。
「少しだけ、休憩…」
通りがかった公園の入り口付近にあった青いベンチに腰を下ろした。疲れた、怠い。
公園をぐるりと囲む木立ちの間から、目的地の病院が見えた。いくつもの建物が集まり、まるで敷地内が一つの街のようだ。
あの、病院の向こう側。ここからではよく見えないが、そこに大学がある。
瀬戸の勤める、大学が。
数分が経過した。疲れは一向にとれる様子を見せないが、祐樹は立ち上がり歩き出した。ひどい寒気がするので、早く屋内に避難したい。
病院はすぐ目の前だ。
公園を出て数百メートル歩いた後、病院の正面入り口までは大きな交差点が一つあるのみだ。
赤信号だったので詰めていた息をそうっと吐き出し、新しい空気を吸い込む。
後少しだ。
信号が青に変わる。
「あ、青…」
わかっていても、重い足が上がらない。青、青、青…。
後少しだ。がんばれ、自分。
ぐっ、と力を入れると、重い片足が上がった。いいぞ、その調子。
一歩、二歩と進む。怠くて怠くてしょうがないが、病院まで後ほんの少しの辛抱だ。
「はあ、はあ…」
あとほんのちょっと、あとほんのちょっとだけで反対側の歩道に辿り着く。横断歩道をこんなにも長く感じたのは生まれて初めてだ。
パッパァー!!
耳元で、いや、そこまで近くないかもしれないが、大きな音がなった。
クラクションだと理解すると同時に、目の端に白い自動車がこちら目掛けて突き進んでくるのが映る。
あれ?俺、もしかしてこのままじゃ……。
「ーーーー危ない!」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
20 / 37