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春、お見舞い
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『OK、準備したらすぐ行く。待ってて。』
すぐに返事が来た。待ってて。
起き上がり、昨日よりは幾分か軽くなった体で洗面所へと向かった。歯を磨き、顔を洗う。
そして、少しだけ髪型を整えた。鏡の中の顔が自然ににやける。待ってて、だって。
玄関口で会うだけにしても念のために、とマスクを装着。1LDKなのでリビング兼寝室のソファで待機することにした。
しばらく経って、部屋中に呼び出しのチャイムが鳴りわたった。
ぎこちなく立ち上がり、インターホンに出る。
「…はい」
「瀬戸です。祐樹くん?」
来た!震える指で解錠のための操作をした。
1分も経たない内に玄関のチャイムが鳴らされた。扉を開くと長身のイケメンと目が合う。両手に一つずつビニール袋を下げている。
「おはよう」
「お、…はよう」
突然瀬戸が祐樹の顔を覗き込んだ。な、何。
「顔色、良くなったな。何、家の中でもマスクしてんの?」
「え、や。来るって言うから、うつしたら困るかなって…」
上手く答えられているだろうか。
「あー、それは構わないんだけど。もう昼なんか食った?」
今更だが時計を見ると、日本の針は正午を示していた。
「や、食べてない」
玄関から中を覗き込んだ瀬戸が、
「もし嫌じゃなかったら、なんか作らせて。ろくに食べてないんだろう」
「え?あ、うん。どうぞ…ってか、どうも……」
どうやら上がってくれるらしい。しかも料理をするということは。
「一緒に、食べるの?」
「あ、嫌だった?材料買ってきちゃった」
そうじゃないけど。っていうか、真逆なんだけど。
「いや、有難いです」
ビニール袋を片手にまとめて持ち替えた瀬戸が祐樹の頭に空いている方の手を置き、ぽんぽんと軽く叩いた。
「よしよし」
ぼっ、という音がしたかと思うほど、いきなり顔が熱くなった。なんだか、またドキドキしてきたし。
「じゃ、上がらせてもらうな」
手に持っていた袋のうちの一つを祐樹に手渡し、瀬戸が靴を脱いだ。
「ど、どうぞ…」
「どーも」
先に瀬戸を通し、部屋と玄関の間に位置するキッチンに向かう後ろ姿を眺めた。
今日、私服だ。スーツ姿しか見たことなかったから新鮮だな、なんて考えていると。
「なーに見てんの」
…振り向くなよ、バカ。
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