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春、お見舞い
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数分後、祐樹の目の前に置かれたのは鍋焼きうどんだった。湯気に混じって麺つゆの良い匂いが立ちこめる。
「美味しそう…」
「どうぞ、熱いうちに食べて」
料理もお手の物か。瀬戸が向かい側に腰を下ろす。彼の前にもうどんが置いてあるが、こちらはどんぶりに盛られている。祐樹の家には土鍋が一つしかないのだ。
いつの間にか添えられていた箸を手に持つ。
「いただきます…」
「はい、いただきます。嫌いなものとか入ってない?」
「え…」
なんでも食べられる方だと自負している祐樹だが、一応うどんを覗き込んで具を確認した。
椎茸、鶏肉、三つ葉…か。美味しそうだ。
「うん、大丈夫。椎茸とか、大好き」
「良かった」
向かい合っていると、思っていたよりは普通に話せて安堵する。
美人は三日でなんとかと言うが、目の前の男の整った顔にも慣れてきたということだろうか。
いや、やっぱり格好いいな…。
自分の目の前で目を細めてうどんをすする男の姿は、今まで見たどんな男前よりも男前で。いや、わかんねー。好みとかなのかな、こういうタイプ…。
じっと見つめてしまっていた。瀬戸が顔を上げ、多少首をかしげてみせる。
「どうかした?」
「い、いや…。料理も出来るんだなって思って…」
そう言うと、目の前の男前が再び目を細めた。今度はうどんではなく、祐樹に向けて。
…笑った。
瀬戸が微笑むと、祐樹にはたちまち世界がクリーム色に見えだす。彼の周りに小さい、でも鮮やかな花々がふわふわと浮いて見え、どこかから小鳥のさえずりが聞こえているような感覚に陥る。
…っいうか!うどん、食べなきゃ。変に思われてねーかな。
持ちっぱなしにしていた箸でうどんを掴み、口元に運ぶ。口を開く。ふう、ふう、と少し冷ましてからパクッと口に入れた。
「うまい!」
思わず声を上げていた。瀬戸の両目がさらに細められた。
「だろ」
ああ、なんだか幸せだなー、と思った。こんな時間がずっと続けばいいのに。
瀬戸が来てくれて嬉しい。熱が出て良かったな、と思った。
瀬戸と出会えて良かった。
これから、もっと仲良くなれるだろうか。瀬戸の、一番の友達になりたいと思った。
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