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過去、嫌い
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きらい、という声が聞こえる。
いや、その声を聞いていたのは随分前の自分だ。
脳内では日本語で鳴り響くが、実際にはアメリカ人に言われたので、英語だったと思う。
「あの日本人、教師にばかりいい顔しやがって」
「あいつ、英語話せるようになる気ねえの?もっと明るくすればこっちだって仲良くしてやるのに…」
こっちが理解できないと思って早口でまくしたてるが、不思議なもので悪口ほどよく聞き取れる。
嘘だ、とさっきとは別の自分が言う。
こんなのは知らない。ちゃんと仲良くしてる友達がいたんだ、アメリカでも。
悪口も最初は少しくらい言われたかもしれないけど、そのうち認めてもらえるようになって…。
それらは声にはなっていなかった。
また別の自分が笑う。
「あるだろ、もっと前だよ。
覚えてねえの?あんなに迷惑かけたってのに。薄情だな…」
ふっ、と記憶の糸が手繰り寄せられた感覚にめまいがした。
押さえつけられる自分の姿が脳裏をちらつく。押さえつけているのは、誰。
「なに、これ…」
つぶやいたのは自分。目の前で怒りを隠しきれていない呆れ顔で見つめてくるのも自分。
不思議な感覚…。
幻覚なのか、夢なのか。ここは一体どこなのか。何もわからないが、とりあえずここが先ほどまでいた自分の部屋でないことだけは確かだ。
深く考えようとすると頭にモヤがかかったようで何もわからず、ふわふわとして訳がわからない。
「あれ…、…なんか……」
眠い。
自分の体が、真っ白いふわふわに包まれていくように感じられた。
もう、何も考えられない。
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