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劇場愛歌 30
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いつもの暗いところ…
いつもの明…
彼奴だ。
俺は確信して、その明かりの方へ
走りに行こうとする
が、足に蔦のような何かが巻かれ、
身動きが取れなくなる。
「よぉ、4日ぶりやなぁ」
俺の目の前に、"俺"が現れる。
いつもと違うそいつの態度に、俺の背筋は少しだけ凍る。
「なぁ"レトルト"。この5日間、お前だけのステージに立って、どうやった??誰か信用できる人は出来たんか?」
いつもとどこか違うはずなのに、
その男はいつもと口調を変えずに問い続ける。
「…うん、最高だったよ。うっしー以外にも仲いい友達たくさん出来たし、この人なら信用していいかなって人も出来た。…俺には眩しすぎた5日間だったかな。」
今なら死ねるね
そう語ると、男はフフッと笑って
「お前にしちゃあ上出来な劇場だったやん。お疲れ、お疲れ。じゃあ、あとは幕を閉じるだけや。」
と、拍手をしながら言う。
そっか、あとは死ぬだけなんや。
色々あったけど、幸せだったかな。
「…そっか、もう終幕かぁ。色々あって意外とエンジョイしてたけど、やっぱり死ぬ時も1人なんやな。」
「………………………死んだ先もずっと1人。惨めなんやで。ええんやな?」
俺は覚悟を決めた顔で男に言う。
「ええよ。」
すると男は観念したような顔で、
「…最後まで、弱音は吐くなよ。」
と言うと、俺を元の世界へ戻してくれた。
戻った頃にはもう朝だった。
そんなにあの空間にいたのかな、と思いながらも
ベッドから身を起こし階段を降りる。
今日で、家族と話すのも
友達と話すのも
最後になるんや。
だからせめて、
俺は母さんに元気な声で言った。
「母さん、おはよう!!」
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