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鼠の城(改)・4
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外では早朝から蝉がうるさい。
もう季節は夏へと移り変わっている。
陽が昇るのも早くなった。
つけっぱなしのTVのニュースで
今日は今年最高気温を記録するらしいと報じていた。
杏介の住む部屋にはエアコンや扇風機などない。
日中の部屋の中はまるでサウナのような
噎せ返る暑さと形容し難い臭いにまみれている。
杏介は一人そんな部屋で目覚め、
物やゴミを掻き分けながら窓へと辿り着き、
なんとか閉め切られた窓のカギを開けようとした。
しかしカギは長い間かけられ
放置されていた為ビクともしない。
仕方なく玄関のドアをほんの少し開けた。
澱んでいた空気がかすかに動く。
それだけで息が楽になる感じがした。
結局昨夜 豪はあの女を追って出たまま
帰って来なかった。
杏介はドアの下に礼奈のサンダルを置き、
部屋の奥へと戻る。
豪が帰ってきたら怒られるかもしれない。
また殴られるかもしれない。
だが今は少しでもこの暑さから逃れたい。
それだけ…。
洗面所の曇った鏡を覗き込むと、
そこには赤黒く変色しパンパンに腫れ上がった
見た事のないような自分の顔があった。
口の中を見ようとしたが
ろくに開かず痛みが走る。
『…いっ…。歯、また生えるかな…』
その晩も翌日も…豪は戻らなかった。
『…痛いよ、変だな…お腹空かないや。痛いとお腹空かなかったっけ…?』
杏介は新鮮な空気を求めて玄関で寝ていた。
今が何時なのか分からなくなっていた。
(暗い。だから夜だろう。でもいつの夜だろう?痛いな…身体…あちこち痛いよ)
外では人の話し声がする。
家族だろうか…
複数の大人と子供の声が重なり合うように聞こえた。
(まだみんな起きてる時間なんだ…そういえば…お水も飲んでな…ぃ)
杏介の意識があったのはそこまでだった。
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