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0.prologue
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この世界は、いくつもの時間や物事がミルフィーユのように折り重なり
ひしめき合って存在している。
同じ時を過ごしていなくとも、同じ時の中で起きた事象はすべて重なり合い
新しい事象を生み出すということを、彼らはまだ知らないのであった。
世界の事象と同じように、感情もまた自身の中で折り重なり
また、他人の手で折られる時もある。
自分では大したことのない事象でも
他の人には大きなニュースであり、朗報または耳の痛い話であるのかもしれない
つまるところ、ある1つの事象は人によって、移ろい常に変化し
時の流れに帰すのである。
昔負った痛みが何年か越した後に痛み始めてもおかしいことではない
昔の傷の事象が今の事象にまで線引きされて、ようやく頭を出したに過ぎないのである。
それと等しく、昔、昔にたった一人の兄が弟を嘘偽りのない眼差しで
口元も真一文に引き結んだその顔で、弟を心から心配していても
なんらおかしなことではない。
それから数年たって、弟がその記憶を思い出しては
思いにふけっていても、おかしくはない。
彼もまた、昔の感情が表にでて自身の認識範囲に顔をのぞかせただけなのである
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