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24 伊野尾side
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知念も山田も、俺を責めることはなかった。
早く、一秒でも早く、大ちゃんに謝らないといけない気がした。
山田達の家から止まることなく走って7分。
今までにないような速度で肩で息をしながら家まで走った。
ぽつりとあかりが灯る家。
見上げてためらうこと無くその家に入る。
「 ... ただいま。 」
「 ! おかえりいのちゃん!どこいってたの〜? 」
眠そうにしながら笑顔で玄関まで迎えにきてくれた大ちゃんをすかさずハグする。
これが、俺の恋人の温もり。俺が愛す人の、温もり。
「 ...ふふ、どうしたの? 」
「 .....ん 」
「 ん?なんて〜? 」
聞き返してきた大ちゃんを少しずつ離して、目の前で土下座する。
「 ごめん...っ 」
「 え、ちょ、どうしたの? 」
「 俺、最低なことした。大ちゃんがいるのに、知念のこと抱いた。ごめん、ほんとに、ごめん...。 」
気まずい沈黙が流れる。
顔を上げるのが怖かった。
大ちゃんの顔からは今、笑顔が消えていることはわかってたから。
「 いのちゃ、ん、俺のこと嫌いに、なっ...た? 」
俺にそう問いかける大ちゃんの声は震えていた。
嫌い? なれるわけない。
むしろ、大好き。
けど、大ちゃん、嫌いになったでしょ?俺のこと。
「 い、のちゃ... 」
だめ、呼ばないで。
俺は、お前の恋人は、大ちゃんを裏切ったんだよ...?
その後に出てくる言葉が
別れよう なのか 大嫌い なのか 。
耳を塞ぎたくなるほど怖かった。
... でも、予想外に頭を下げてる俺の前に落ちてきた1粒の水滴。
まさかと思い反射的に顔を上げると、何粒もの涙を
声を殺しながら流してる大ちゃんが、そこにはいた。
今までに見たことない、大ちゃんの弱々しい顔。
俺は涙を拭ってハグしようと、手を伸ばした。
大ちゃんまで後数cm。そこで手が止まった。
真実を告げてしまった後の手。
目の前のコイツ以外を抱いた手。
ついさっき帰ってきて抱きしめたばかりなのに、なぜか俺の手は大ちゃんに触れようとしない。
そっか... もう、やってしまった後だと遅いんだ。
俺じゃ、コイツを、大ちゃんを、幸せにできない...?
いらない思考ばかりが頭をよぎって離れない。
その時、瞬時に抱きしめられた自分の体。
「 なんで... 抱きしめて、くれないの...
も、いのちゃ、ん、俺のこと、きら、いに... 」
泣いていたからなのか、呼吸を整えながら途切れ途切れに息を吸い、話しかけてくる大ちゃん。
そっか、抱きしめられてるんだ。
俺が手を伸ばしても届かなかった大ちゃんが、今、俺を。
「 嫌いに... なれるわけないでしょ... 」
なんでだろう。こんな言葉しか出てこない。
言いたい事、すべて言い切りたいのに。
「 俺、もうお前しか愛せない。こんなの都合いいって思われるかもしれない。でも、大ちゃんがどれだけ俺のこと嫌いになっても、俺はずっと好きでいる。
ごめん... ごめんな、こんな恋人で...っ 」
「 う...、うぅ... 」
全てのことを伝えたその後に、俺の肩に落ちてきた大ちゃんの涙。
そんな大ちゃんを見て、今までにないほど胸が締め付けられた。
なんで、なんで大ちゃんをこんなにするまで気づかなかったんだろう。
「 お、れも、いの、ちゃ、だいすき... 」
てっきり 別れよう とかそういう言葉をかけられるって思ってたから
とてもびっくりした。
「 え、おま、何言って... 」
「 俺も、もう、いのちゃ、ん、しか、好きになれない... だから、別れよ、なんて、言わないで... 」
言われると思ってた言葉を、言わないで、なんて言われて
思わず俺の目からも、涙が出てきた。
「 言わない。言わないよ。大ちゃん、ごめんな。ありがとう。大ちゃんを、心の底から、いっちばん、愛してる...。 」
「 う、うぇ...、ふぅ...、うぅぅ... 」
今は何を言っても泣いてしまう泣き虫な俺の恋人。
けどそんなコイツに惚れたんだ。
本当にいけないことをした。許してくれないと思ってた。
でも、心のどこかで 大ちゃんなら って期待してたのかもしれない。
大ちゃんの笑顔、泣き顔、怒った顔、優しい温もり、全て俺だけのものがいい 。
「 愛してる、大ちゃん。 」
これからも一生、大好きで大切な、俺の恋人。
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