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好きという気持ち
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「じゃあな、タキヤ。行ってくる」
「お気をつけて、ソウゲツ大佐。王様に聞けばきっと何か分かりますよ」
「ああ、王子様を頼んだぞ」
今日はせっかくの休日だったが、大佐は職場であるアース警察本部に向かうことにした。王子様の症状について彼の父親である火星の王様に相談するためだ。
屋敷のエントランスに停めた通勤用の車に乗り込むと、出発の前に二階にある自分の部屋の方を見上げる。すると、少年の小さな影が白いバルコニーの窓辺から名残惜しそうにこちらを窺っているのが分かった。
可哀想だが、ブカブカの服で歩き回るのは危険だから部屋に残してきたのだ。
「ほっほっほっ。ご心配なく。お洋服のことなら私が何着か見繕っておきますからね」
タキヤの声に頷くと、大佐はゆっくりとアクセルを踏みこんだ。
*****
しかし、そんな大佐の心配をよそに、火星の王様の答えはひどくあっけらかんとしたものだった。
「おおーっ! そうかそうか、ついにリオにもアレがきたのか!」
まるでそれを待っていたかのような王様の口ぶりに、大佐は身を乗り出した。
「やはりご存知だったんですね。アレとは一体なんのことです?」
「いやいや、一種の反抗期みたいなものでな。思春期の頃の若返りは、火星では珍しいことではないんだ。なーに、ものの2週間程度で症状はすっかり消える。安心してくれたまえ」
「なるほど。一時的なものなんですね」
それを聞いた大佐は胸を撫でおろした。
まず、あの症状が病気の類でないことが判明し、そして何より今まで育んできた自分たちの思い出が王子様の中で一生失われたままなのではないかという一番恐れていた懸念が消えたのだ。
期間限定ということならば、少年にも耐えられるに違いない。
通信を終えた大佐は少しばかりの仕事を片付けると、まっすぐに家路についた。
王子様の顔が、早く見たかった。
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