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トントトトントン......トントン!
そこにアキラがいないのは分かっていたけれど、王子様はちゃんとドアをノックした。
思ったとおり返事がなかったのでニッコリと微笑むと、人差し指を口に当てながらこっそりと中に忍び込んだ。
お目当ては部屋の本棚にある大量の少年漫画である。
ここ連日の雨のせいで外に遊びに行けなかった少年は、皆が仕事に出かけた後この部屋で読書をすることが毎日の楽しみになっていたのだ。
昨日はSLAM DUNKを読んだから......。
「次はどれにしようかなー?」
面白そうな本がたくさんあって迷ってしまう。
キラキラと目を輝かせながら本棚を見回していると、ずいぶん上の段にも漫画が並べられていることに気がついた。
「わあ、上にもこんなにたくさん!」
興味をそそられた王子様は衣装ケースを引きずってくると、それを台にして初めて目にする漫画を手にとってみた。
「どれどれ?」
表紙の絵には美しい男女が仲良く抱きあっている姿が描かれていた。
これは少女漫画というやつだろうか?
いつもの王子様なら「なーんだ」と言って放り投げるところだが、なんとなくタイトルを読みあげてみると......。
「えーっと......『ハッピーウェディング! 僕の愛しのお嫁さん』1巻......」
お、お嫁さんだって......!?
思わずその文字に釘付けになった。
「僕のことだー!」
嬉しそうにそう叫ぶと、少年は漫画を片手にピョンと床に飛び降りた。
深々とベッドに座ると、さっそくページをめくり始める。
漫画には思った通り、カッコいい男と可愛い女がでてきた。
そのうちに第二の男が登場し、女を取り合ってやっかいな問題が発生する。
「えー? この後どうなるの?」
タイトルに惹かれて読んでみたものの、中身の絵も綺麗だし、恋愛ものも意外と面白いと思った。
あっという間に1巻を読み終えてしまった。
チョコレートをひとつ口に入れると、次の2巻を目指して再び衣装ケースにのぼる。
集中してどんどんと読み進めていくうちに、いよいよ物語はクライマックスを迎えた。
最終的に主人公の男と女は結ばれたようだ。
「よかった。ちゃんと結婚できたんだ……」
王子様は感動して少しだけ泣いてしまった。
しかし、少年が本当の意味で感動するのはここからなのだ――。
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