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・・・・・
あれ、外に出たのかな......?
少し肌寒いなと感じた、ちょうどその時だ。
「王子様、いいよ」
大佐が囁いた。
「......ん」
「目を開けてごらん。ゆっくり」
王子様は言われた通りにした。
すると......。
「わ......ぁ!」
思わず息を呑んだ。
瞼の向こうに広がっていたのは漆黒の空間にありったけの宝石をちりばめたような無数の星の煌めきだった。
それは一つひとつがチラチラと瞬いて、まるで何かを語りかけてくるみたい……。
王子様はしばらく何もしゃべらずに、夜の神秘に心を奪われていた。
やがて身体が床に降ろされると、ようやくそこが自分たちの屋敷の屋上であることが分かった。
「この辺りは周りに建物はないし、明かりも少ない。我が家は天体観測にもってこいだろう?」
大佐の言葉に王子様は素直に「コクコク」と頷いた。
「すごい……! こんなに星、たくさん、初めて!」
大興奮の少年の様子に大佐は目を細める。
「今夜は特に視界が良好だ。肉眼でも見えなくはないが、せっかくだから望遠鏡を覗いてみよう」
王子様は目を輝かせた。
「何を見るの?」
「こっちにおいで」
大佐が手招きした方向には、星の光を反射して銀色に輝く円形の小屋があった。
中に入ると真ん中に立派な望遠鏡が見えたので、王子様は手を叩いて大喜び。
「大人になった君も、今とまったく同じ反応をしてくれたよ」
嬉しそうに言いながら、大佐は望遠鏡の台にまたがった。
慣れた手つきでパネルを操作すると、どういう仕掛けか円形の天井が中心から放射状に開いていき、黒い視界がみるみるうちに満天の星空に変わっていった。
「わあっ……わあああ……!」
王子様が歓声を響かせている間に方位と高度を定めると、大佐はあっという間にファインダーを固定して今夜の目標を捕らえてしまった。
「さあて、君のお城が見えるかな? 覗いてごらん」
「うん!」
大佐が招いてくれた膝に座ると、王子様は両目をレンズにくっつけた。
おお、見える。
これは何だろう?
丸い視野に浮かんでいるのは初めて見る赤い星だ。
けれど、何だかとても懐かしい。
もしかして……!
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