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言いながらわずかに残った火熱をじっと見つめていたが、やがてそれもチリチリと紙を焦がして消えていった。
昂るこの気持ちだって今回だけじゃない。
彼をあきらめるために過去に何度も鎮火を試みたことがあるけれど、それらがことごとく失敗に終わってからはもはや自分は虜われたのだと観念し、密かに降伏することを決めたのだ。
男女の快楽を一から仕込み、身も心も意のままにしてきたはずなのに、実際はここよりもさらに高い場所から朗らかに支配されている。
それは織り込み済みの恋だから悔しいと思ったことは一度もなかった。
しかし今回ばかりは......。
「少々ずるいな」
大佐は小声でそう呟くと、口角をキッと引き締めてみせた。
ゲオルグはその肩をバシリと叩いて勇気づける。
「だーいじょうぶだよ。ほんの数日だ。休暇が終わる頃にはイヤと言うほど可愛がってやれるって。ところで明日からどこに行くんだっけ?」
大佐は機嫌よく頷いた。
「久しぶりに海辺のホテルをとった」
「アツいねえ」
「砂浜であの子を思いっきり遊ばせてやりたいんだ。天気が少し心配だけどな」
「低気圧がそこまできてる。早めに向かった方がいいぞ」
「わかった。祈っていてくれよ」
しかし大佐のこの心配は、帰宅後、実に思いがけない所から解消されることになるのだ――。
*****
休暇に備えて目の前に積まれたありったけの仕事を片付けた。
気持ちも軽やかに最後の稟議書にサインを終えると、いそいそと上着をつかんで車に急ぐ。
思った通り。
屋敷に近づくと二階の窓から小さな人影が動くのが見えた。
次の瞬間にはそれが消えたので、おそらくこちらに向かって走っているのだろう。
大佐の口元が自然と弧を描いた。
「ソウゲツーー!」
エントランスのドアが開くと、満面の笑みを浮かべた王子様が勢いよく飛び出してきた。
お気に入りのパジャマを着ているから、風呂も夕食もすでに済ませたのだろう。
「やあ、今帰ったぞ。おい、暗いんだからそんなに走るな。今そっちに行くから」
大佐はそう言ったが王子の駆け足は止まらなかった――。
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