アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
5
-
「ソウゲツ......」
王子様はもじもじと顔を上げると、胸元のレースをいじりながら説明する。
「コレ、汚れたパジャマの代わりなんだ。アキラが一生懸命探してくれたけど、僕が着られそうな服、こんなのしかなかったんだって......」
言いながら決まり悪そうに眉を寄せていたが、大佐はその姿から目が離せなかった。
いま王子様が身に付けているもの。
それは火星王家の紋章があしらわれた純白のネグリジェであり、「リオ」がお嫁に来る際に国から持たされた花嫁道具のひとつだった。
けれど当の本人は「足がスースーするのがイヤ」という理由から専ら戦隊ヒーローのパジャマを愛用していたので、ほとんど袖を通されることなくタンスの肥やしと化していたのだ。
それは大佐にしてみれば残念以外の何物でもなく、今までに何度も水を向けてきたものの一向に着てくれる気配がないので最近は半ばあきらめていたのだが......なんという奇跡だろう。願いが叶ってしまったではないか!
大佐は胸いっぱいに空気を吸い込んだ。
心臓が高らかな鼓動を刻み始める......。
「王子様。こっちに来て、よく見せてくれないか」
「えー?」
「歩きにくいか?」
「ちょっとね」
身長が低いためか、ネグリジェの裾は少年のくるぶしのあたりでヒラヒラと揺れていた。
不本意らしいが、それでも素直にやってくる姿はまるで「てるてる坊主」がよちよちと移動しているような滑稽さがあり、大佐の目にはそれはそれは可愛らしく映っている。
大佐は自分の側まで来させると、頭の天辺から爪先までじっくりと観賞した。その場でクルリと一回転させてみる。
王子が回ると、ネグリジェの裾がフワリと持ち上がり、綺麗な円を形づくった。
それを面白く思ったのか、王子様はその後も愉快気にクルリクルリと回転しては、大佐の目を楽しませてくれた――。
*****
「明日はきっと晴れるぞ。ぜんぶ君のおかげだよ」
「楽しみだなあ。僕、青い海ってはじめてだ!」
大佐が腕を広げると、火星の王子様は息を弾ませながら胸に飛び込んできた。
しっかりと抱きしめてやると、今度は少し恥ずかしそうにクスクスと笑いはじめる。
「ねえ、ソウゲツ?」
「うん」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
75 / 206