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その日の夜中――。
王子様は、ぼんやりと目を覚ました。
「んー、オシッコ……」
ウトウトと頭を持ち上げてベッドから起き上がる。すると隣に寝ていたはずの大佐がいないことに気がついた。
「あれ、ソウゲツ……?」
いったいどこ?
不安に思った王子様は枕元のランプを灯した。
キョロキョロと辺りを見回すと、すぐにソファーで眠っている彼が目に入ったのでホッと胸を撫でおろす。
「もー、心配させるんだから」
ネグリジェの裾をたくしあげると嬉しそうに大佐の側へと駆けていった。
それにしても......。
「(どうしてこっちに来ちゃったんだ?)」
自分の寝相が悪いのは知っているけど、ベッドは大きいしそこまでするとは考えにくい。
もしかして暑かったのかな?
でもその割にはしっかり毛布をかけているし......。
「ねえ、トイレ」
耳元で囁きながら眠る大佐の腕をゆすった。
いつもみたいに一緒に来てもらおうと思ったのだ。
しかしよく眠っているのか、彼はなかなか目を開けてくれない。
「ねえったらっ」
王子様は甘えるようにスルスルと男の身の上によじ登った。
意地でも起こしてやろうと思いながら。
けれど......。
「ソウ......」
大佐の寝顔を正面に見ると、どういうわけか言葉が続かず、小さな心臓はキュゥゥンと締め付けられるように鼓動が速くなった。
それはいつもの端正な顔立ちに変わりはなかったが、今までにないくらい不可侵なものだったのだ。
とは言ってもこちらを拒むような冷たい類いのものでは決してなく、表すなら戦いに疲れた戦士がひと時の安寧を求めてひっそりと地面に横たわっているような、そんな穏やかな寂しさだった。
今の自分に寄り添うことはできないし、彼もきっと望まないだろう。
それがどうしようもなく悔しいくせに、胸にせり上げてくるのは「この人が好き」という気持ちばかりだった。
おかしい。
普段の彼の方がよっぽどカッコいいのに。
王子様はごしごしと赤い目をこすると、もう一度大佐の顔を見た。
それから「よし!」と決心したように一声叫ぶとソファーを飛び下り、トイレを目指してたった一人で暗い廊下を走って行った。
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