アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
思い出のデート
-
・・・・・
――朝がやってきた。
軽やかな小鳥のさえずりが豊かな木々のあちこちから聞こえてくる。
あれはキセキレイだな。
珍しい。どれ?
ソウゲツ大佐は窓辺に歩み寄ると手にした新聞を小脇に抱えた。レースをかき分けながら太陽光の降り注ぐ庭の芝生に目を細める。
高い空はすがすがしく、ところどころに薄い雲をたなびかせてはどこまでも続く水色のパノラマをみせていた。
予報がまるでウソのような申し分のない行楽日和だ。我が家の「てるてる坊主」のおかげに違いない。それにしても天気が良いというだけでこれほど心が踊るのは一体何年ぶりだろうか?
何を隠そう、大佐にとってこれは王子様との記念すべき「初デート」なのだ。
日々の慌ただしさから今日までろくに遊びに連れ出すことができなかった。
随分と待たせてしまったが、遠路はるばるお嫁にきてくれた愛しい人に地球という星を心ゆくまで楽しませてやりたい。
その一心で張り切る男に「いい歳をして」と揶揄することなど一体誰にできるだろうか?
大佐はいそいそと王子様の眠るベッドに近づいていった。
寝顔を覗きこむと、可愛いおでこにキスをする。
「王子様、そろそろ起きてくれ」
「んんー......?」
「これから海で遊ぶ子、だーれだっ?」
「あ……僕ぅっ!」
大佐の声にパッと目を輝かせると、王子様は両手を広げた。抱っこをねだると、彼は笑って抱きしめてくれる。
「よしよし、朝食を食べたらすぐに出発するぞ。カッコいい服に着替えておいで。髪を解かしてあげるから」
「うんっ」
いつになく上機嫌な大佐の様子に王子は嬉しそうに頷いた。
彼はすでにシェービングを終え、諸々の用意も済ませているようだ。
ずいぶん早起きしたのだろう。
「(うふふっ。何だか僕より楽しみにしてるみたい)」
まるで童心に帰ったような男を見ては、夕べの甘くほろ苦い時間が幻だったのではないかと疑いたくなるが......。
王子様はクスクスと笑うだけで何も言わなかった。
ネグリジェを脱ぐと「んー」と少し考える。
大佐が見ていないことを確認すると、今日のデートに持っていくリュックサックにこっそりとそれをつめ込んだ。
もちろん彼にはナイショ!
・・・・・
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
86 / 206