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「じゃあな皆。留守の間、頼んだぞ」
「任せてください。リオ王子、忘れ物はない? 楽しんで来てね」
「うんっ! 行ってきまーす!」
アキラ達に手を振ると、二人は車に乗り込んだ。
レジャーにうってつけの青いスポーツカーは、今日はオープンになっている。
助手席に座った王子様は大佐の手慣れたハンドルさばきを面白そうに観察していた。本当は自分で運転してみたかったけれど、残念ながらアクセルに足が届かなかったのだ。
*****
屋敷の周辺には緑の風がそよぐ牧歌的な風景が広がっている。
しばらくは同じような眺めだったが、初めてそれを目にする少年にとっては新鮮なもので、時どき「わぁー」と感嘆の声を漏らしては、遠くの山々や大空を飛ぶ野鳥に目を楽しませていた。
やがて道の左右に広大なブドウ農園が見えてきた。
「この辺りはワインの名産地で、ここで作るブドウの品種は地球でも5本の指に入るんだ。昨年の品評会ではついに――......」
大佐はハンドルを握りながら嬉しそうに説明している。
「きっと君も気に入るよ。大人になったら二人で飲もうな。どうだい、今から楽しみだろう?」
「うーん......」
その質問に王子様は腕を組んでしまった。
10歳の彼にとってワインの味は正直言って「微妙」である。
酔っぱらった大佐のことを思い出すとそれだけで顔が火照ってくるし、とてもじゃないが自分が飲んで正気でいられるとは思えないのだ。
「ワインは変なクスリみたいだ。ブドウジュースの方がよっぽど美味しいよ。どうして大人は、わざわざマズくしてから飲むの?」
そう言うと、大佐に大笑いされてしまった。
「本当のことじゃん」
口を尖らせると、よしよしと頬を撫でられる。
「ああ、君にはずっとこのままでいて欲しいな」
「また子供扱いした」
「そんなことはないよ? お、そろそろおやつの時間だな。海までまだまだかかるから、チョコレートでも食べようか」
「ん......!」
その言葉にまんまと乗せられた王子様。
あっという間に機嫌を直すと、お菓子の袋からアポロを取り出してコロコロと旨そうに舐めはじめた。
大佐が掌を差し出すと、一粒だけ分けてくれた。
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