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さっきまで親しんでいた波の音が少しずつ、少しずつ耳から遠ざかっていく――。
ここなら誰にも見つからない。
外界から切り離された僕たちは、小さな世界に二人っきりだ。
ねえソウゲツ、どうしよう。
恥ずかしくて、ドキドキして......僕、もうあなたの顔がほとんどまともに見られないんだ。
貝殻が羨ましかった。
本当は我慢してたの。
だってまさかこんなお外でキスしてくれるなんて思わなかったし、いつもみたいに夜じゃないから視界はどうしても明るくて......。
それにさっきまで意識していなかったけど、あなたは今シャツもズボンも外に干してる。
つまり、ほとんど何も着ていないじゃない......。
「ソウ……ン……んっ」
そんな状況にも関わらず容赦なく糖度を増していく口づけに、気持ちがムズムズして、今にも身体が浮き上がってしまいそう。
こういう時はいつもだったらガウンにしがみつくんだけど、それができない僕は思いきってあなたの黒髪に全ての指をうずめてみる。
それはしっとりと濡れていて、キスの角度を変える度に僕の額や瞼の上を流れて涼しい曲線を描いていった。
思い返せば、キスの最中にこうやって僕の方から触れるのって初めてだよね。
おずおずと指を動かして撫でるように包みこんでみれば、口角をキュッと上げたあなたがさも嬉しそうに甘い舌先を絡めてくれる。
どうしてもっと早くからこうしなかったんだろう。今までだって、もっともっと触れてあげればよかったのに......。
ソウゲツ、好きだ。
あなたといると、たまに涙が出そうになるんだ。
僕はそろそろ母上が恋しくなってきた。
きっと母上も心配しているし、もうすぐ会える。そんな気がする。
だけど、そしたらあなたはどうなるの?
しばらく僕がいなくなっても、やっていける?
暗い夜に、ちゃんと一人で眠りにつける……?
ううん、そんなことを言ったら「君のほうこそ」って笑われちゃうよね。あなたは強い人だから。
それでもたまに見せてくれる寂しさや、怒りや憤りの大元は確かに「僕」に根差しているから、いつまでも忘れずにいてくれるかな?
思い上がりだってかまわない。
あなたに寄り添ってあげられるのは、きっとこの世に僕しかいない――。
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