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【終章】5
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「よろしい。私に任せなさい」
「ソウゲツ。ほ、本当?」
王子様は不安と期待が入り混じった表情で大佐を見上げた。
他の客の様子を見ると、大人でさえ射的銃の操作に手こずっているようだから、これでは狙った的にコルクを当てるのは相当難しいだろう。
ましてやペレのボールは最も難易度の高い景品である。
しかし大佐は自信満々に言った。
「ふふふ、私を誰だと思っているんだ? 銃火器類の扱いは得意分野さ。ひとつ腕前を披露しよう」
「わあっ、やったあ!」
頼もしい言葉に、王子様はたちまち大船に乗った気持ちになったのだった。
*****
この時、大佐の脳内にはすでに王子の喜ぶ顔がハッキリと浮かんでいた。
風呂場で交わした「何でも願いを叶える」という約束を果たす時がきたのだ。
ああ、武者震いがする。
早く取りたい。
これまでいくつもの死線を制してきたこの右腕で――。
射的場の男に金を払って銃を受け取ると、大佐は床に引かれた白線に歩みより、足を揃えた。
美しく立つ。
その浴衣の佇まいは、さながら剣士のような風格があり、一般の客とは一線を画する厳かな雰囲気を纏わせていた。
それを感じた周りの客は彼のジャマにならないよう、一人、また一人と白線から退きはじめる。
大佐はゆっくりと右腕を上げると、射ぬくべき的に照準を合わせた。
「ソウゲツ、お願い......!」
愛する人の声を背中に受けながら、引き金に人差し指をかける。
「一発で仕留めるぞ」
それと同時に放たれたコルクはパンッと勢いよく空気を裂きながら直線を走り、見事、最奥のサッカーボールの箱にクリーンヒットしたのだった――。
「や......やったあーーーっ!」
満面の笑みを浮かべて飛びかかってくる少年を胸に受け止めながら、大佐は幸せな気持ちで頬を上気させていた。
周りにいた客達は皆一瞬の出来事にポカンと口を開けていたが、やがて我に返ると大佐の妙技にこぞってパチパチと称賛の拍手を送ってくれた。
さあ、これで今夜は全てがうまくいく――。
はずがなかった!
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