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【終章】28
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もしや、あれは全て自分だけが見ていた夢だったのではないか?
大佐は再びベッドに寝そべると枕元にあるサイドテーブルに手を伸ばした。
「(良かった。ちゃんとあるぞ)」
愛用の腕時計の隣に置いた小さな宝物をつまみ上げると、ほっとした表情でそれを見つめる。
すると。
「あれ......? それってもしかして......」
王子様が不思議そうに首を傾げたので、大佐はそれを手渡してやった。
「わあ! やっぱりそうだ。懐かしいなあ......!」
少年のこの反応に、大佐は目を丸くした。
「王子様、これが何だか分かるのか?」
「うん。子供の頃に見たことあるよ。地球の貝だよね?」
「前にも地球に来たことがあったのか?」
「ううん、ないよ。ないけど......どうしてだろう? 誰かにこれをあげた気がする。誰か、すごく大切な人に......」
そこまで言うと王子様は「ハッ」と決まり悪そうに顔を赤らめた。
「ご、誤解しないでくれ。浮気とかそういうんじゃないんだ。子供の頃の話だし......」
「ほおー? 信じていいんだな?」
「ソウゲツ、本当だよ。信じて?」
必死で弁解してくる王子の様子に、大佐は笑いだしたいのを必死でこらえていた。
「まあいい。実はお互いさまなんだ。私だってこの貝をくれた愛しい人に『ペレのボール』をプレゼントしたことがある」
大佐の言葉に王子は一瞬プクッと頬を膨らませたが、すぐに「え?」と驚いた表情をしてみせた。
「ぺ、ペレのボールだって!? 僕の秘密の宝物だ......」
それはいつからか火星の少年の手元にあった。
気がつけば母上にもナイショにしていたオモチャ箱に大切にしまってあり、誰にも見せびらかすことなく、今でも実家の部屋にあるのだという。
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