アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
【終章】29
-
不思議なこともあるんだなと王子様は首を傾げていたが、その顔は嬉しそうに笑っていた。
「ひょっとしたら僕たち、前にも地球で会ったことがあるのかな?」
「そうかもしれない」
「きっとそうだよ。僕が忘れちゃっただけ......」
思い出したい......。
そう言いながら王子様は少しだけ寂しそうな目をしたが、大佐はもうその言葉だけで十分だった。
ゆっくりと王子をその手に抱くと「ずっと側にいて」と囁き、瞳を閉じる――。
――どのくらいそうしていただろう?
やがて王子様は大佐の胸元でムズムズと身体を動かしはじめた。
「それにしても変だよなー......?」
「何が?」
「このパジャマ。たった1日で布ってこんなに縮むもの?」
王子様はつんつるてんになった自分の手脚を恥ずかしそうに持ち上げてみせた。そのなんとも滑稽な姿に、大佐は声を上げて笑ってしまう。
「はっはっはっ!」
「もおー、笑いごとじゃないよっ。僕、もう着替えるから、この腕を離して?」
「いいじゃないか。もう少しベッドにいて?」
「だって、パンツもキツいんだもん。ほら、ゴムの跡がついちゃってるだろ」
おやおや、まったくこの子は......。
「仕方ない。そこまで言うなら脱がしてやろう」
「ええっ?」
目を丸くする王子様。
その上に軽やかに身を乗り上げると、大佐は当然のように胸のボタンに手をかけるのだ。
「わわっ、ちょっと待ってよ! 朝っぱらから何やってるんだ!?」
「何って、君から誘ってくれたんだろう?」
「どこでそんな風に解釈したの!?」
「いいからキスをさせてくれ。そうだ、ひょっとしたら記憶が甦るかもしれないぞ?」
「えっ、ホントに?」
「試してみよう......」
素直な王子様は真っ赤な顔をして目を閉じる――。
*****
「大きくなったな、リオ......」
「あん......」
幸せな朝の戯れに、過ぎし日に貝殻を渡した人の顔が微笑んでいた――。
〈了〉
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
142 / 206