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僕がフォワードを務める高校のチームが地区予選の準決勝を勝利したのが昨日のこと――。
0対0で後半を終えた試合は延長線にもつれこみ、チームメイトの決死のアシストを受けた僕が辛くもあげた一点を死守した形だった。
イヤッホーーっ!!
もう飛び上がらんばかりに嬉しくて家に帰ってルンルン気分で報告したら、彼は「大したものだ。君は我が家のホープだぞ」って肩を叩いて喜んでくれた。
だけど問題はその後だ。
決勝進出を決めた僕らの次の相手は、なんと日本州の学校だった。「交流を兼ねた親善試合」というやつで、一年生の僕は初めてその事実を知ったんだけど、どうやら毎年恒例の行事らしい。
他州のチームと対戦する機会なんてそうそうないから、俄然やる気がでてきちゃうよねっ。
「うふふっ、前回は僕らの州でやったから、今回は日本でやるみたい。僕、他の州に行くのって初めてだからすっごく楽しみ!」
「ああ、くれぐれも気をつけて......って、んんん? 何だってぇ!? もういっぺん言ってみなさいっ!!」
この後のソウゲツときたらもう……
本人に言ったら絶対に怒られちゃうけど、信じられないくらい面白かった。
被害妄想をこれでもかと爆発させては子供みたいに駄々をこねたり、お腹が痛いと言ってみせたり......それでも効果がないと分かると今度は矛先を日本に変えて「王子を奪いに来た悪魔の手先」みたいに騒ぐもんだからそのたんびに僕がたしなめたけど、それはもう筆舌に尽くしがたいほどの狂乱ぶりだった。
ソウゲツのそんな一面を見てしまった僕は奥さんとして唖然とした気持ちになったけど、やっぱり始終笑っていて、もちろん怒る気になんてこれっぽっちもなれなくて、それどころかほの暗い嬉しささえ感じていて......。
まだまだ子供で危なっかしい僕が少しの間でも家から離れてしまうことが、クールな彼をこれほどまで動揺させる事件だということを今回身をもって知ったんだ。
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