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「ああ、頭がクラクラする......」
その頃──。街の広場では王子様が熱い溜息をついていた。
先ほどのやりとりで火照った頬に、冷たい夜風が気持ち良い。
「おかしくなっちゃいそう......こんなに熱が上がったの、もうどれくらい前だっけな......」
全く覚えていないけれど、おそらく気が遠くなるほど昔のことだ。
そもそも自分がいつからこの街に立っていたのかもよく分からない。人が産まれて、生きて、やがて死んでいくのを見てきたから、もう何十年にもなるはずだ。
そんなことを頭の中で考えていると、突然広場の向こうから野太い男の怒鳴り声が聞こえてきた。
「バカヤロウッ! てめぇ、何度言わせたら気が済むんだよ。こんなにマッチが残ってるじゃねえか。全部売りさばくまで帰ってくるなってあれほど言っただろうが! 分かったならさっさと行ってこい!」
「おじさんお願い、もう今日は許して! きゃあっ......!」
見ると、手に重たそうなバスケットを下げた女の子が粗末な家の前に倒れこんでいた。怒鳴り声の男に思いっきり肩を突き飛ばされたのだ。
王子様は思わず「あっ!」と身を乗り出したが、二本の脚は台座から離れない。
それどころか、指一本すらピクリとも動いてはくれなかった。
王子様は転んでしまった女の子を助けられなかった悔しさから、下唇をギュッと前歯で噛んでしまう。
「い、イタぁ......」
女の子はやがてヨロヨロと立ち上がると、先ほどの衝撃で擦り剝いてしまった手のひらを悲しそうに見つめた。
「大丈夫? 血が出てるじゃないか。さあ、僕に見せてごらん」
王子様がかけたその声は、もちろん女の子には届かなかったが、彼女はやがて目線を上げると少年の像を目に入れてホッとしたのか、力なく微笑んでくれた。
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