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廉の襲来
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穏やかな朝のはずだった
心地の良さにあくびをしそうになる新の耳に、教室に
突然大きな音が鳴り響く
その音に新はもちろん、教室のみんなが驚いた
顔を上げて音のした方に顔を向ける
————廉さん...っ
扉に手をかけて新を睨みつける廉の視線にぶつかった
何で...
廉が新の教室に来ることは今までなかった
だからこそ、その驚きが隠せなかった
廉は新を睨みつけながら教室の中に足を踏み入れた
その後ろからいつもの連れ仲間がぞくぞくと教室の中へ入って来る
鼓動がドクドクと脈打ち、全身が強張る
上学年の群れに怖くなったのだろう、動けなくなる人や堪らず教室を出ていく人がいるが、廉はそれに目を向けず新の座る前まで来た
「...昨日どこ行ってたんだ?」
聞き慣れた廉の低い声に体が固まる
静かながらもその声色の中には怒りが込められているのがすぐに分かった
昨日、絶対にそれを聞かれるだろうと答え方を考えたはずなのに
驚きと緊張と恐怖で言葉が出てこない
口を開けても取り繕えるような一言が返せない
答えなくちゃ...答えなくちゃ...っ
そう考えれば考えるほど、思考がぐちゃぐちゃになって余計に何も言えなくなってしまう
廉とも目を合わせられなくて、顔を見ることができない
「...聞こえねぇのか?昨日どこ行ってたんだよ?」
さっきよりも怒りの色が強くなった声に身体が震える
悠の所に行ってたなんて口が裂けても言えない
だけど、言い訳だって言えない
何も、言えない...
下を俯き始めた新の耳に廉の舌打ちが聞こえた
そして、それは一瞬の出来事だった
身体が宙に浮くような感覚の後、勢いよく後ろへ飛ばされた
そして大きな物音がして、床を転がり何かに頭をぶつける
痛いという感覚だけがあって、視界も揺れ、何が起きたか分からない
次に女子の悲鳴じみた声が聞こえた
状況の判断がつかない新だったが、やっと見えた視界に転がり倒れたイスが映る
廉に座っていたイスごと蹴り倒されたのだとやっと理解した
そしてこちらに歩み寄る足が見え、それが廉と分かるのにはもう時間はいらなかった
怖い、怖い
「無視するなんてお前も偉くなったな、新。これが最後だ、昨日どこ行ってた」
新に強要するかのごとく語尾を上げない言葉の重さに、更に思考が追いつかなくなる
暫くの沈黙の後、廉は突如として新の腹に蹴りを入れた
「...う”あ”っ!」
殴られたり蹴られたりする事に慣れたつもりでいても、やっぱり痛いし怖い
廉の蹴りに身体を丸めて、痛みを訴えるそこを手で押さえる
「...ごめ、っな..さい...っ」
「...チッ、やっと喋ったと思ったらそれかよ。お前日本語分かんねぇのか?」
廉はそう言いながらしゃがみこみ、新の髪を乱暴に掴む
新の潤んで怯えた目を冷めた目で見据える
「言えねぇ理由でもあるってのか?あ?」
そう言いながら髪を強く握り直す
もちろんあるから言えない
でもまたそれも言えない
発言できる事など新には何ひとつ無かった
小さな声で再度、ごめんなさい、と口にした新の髪を振りほどく
やっぱりあの時、部屋に帰っていればよかった
そしたらこんな目にあってなかったのに...
後悔だけが募り、涙が溢れる
廉は引き連れて来た仲間に新を部屋へ運ぶように指示を出す
だが、いつもと違う朝はこれだけに終わらなかった
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