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牢獄
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目の前で脅しをかける廉はそれから無言のまま新を見据える
その視線が刺さる中で、新は必死になって気の利く言い訳を探した
廉に怪しまれずに嘘をつくという行為は、新にとっては無理難題で冷や汗が背筋を走る
必死に言葉を探して下へと視線が下がる新の名を、凄みのある声で廉が呼んだ
視線のあった廉の目は、答えろ、と
そう言っていた
もう、逃げられない。
「....昨日は...1人で、グラウンドの側で...休んでました...」
お昼時間や静かに一人で過ごしたいときはよくそこに行き、ベンチで何時間も座ることがよくある
人通りも殆どなく、穏やかに過ごせるのがそこだった
でも、昨日は行ってない
恐る恐る言葉を紡ぎ、祈るような気持ちで廉の怒りが治るのを待った
「ほぅ...1人で、ずっとそこで?」
疑心があるのだろうか、廉は探るようにまた質問を投げかける
新は小さく頷き、緊張と恐怖からキュッと手を握る
「じゃあその腹の包帯はなんだ?保健室にでも行ったのか」
廉の言葉に一際大きく鼓動が鳴る
思わずシャツの上から包帯が当てられた部分に手を添える
何で...——
腕や目立つ箇所の手当てされたものは取ったが、腹部なら服の上からなら気付かないと思ったし、折角悠にして施して貰った包帯を取りたくなかったからそのままにしていた
それを廉が気付くなんて想定していなかったから、誰が見ても分かるほどに動揺してしまった
それに廉に殴られたりしても手当てなんてしたことはなかった
尚更、廉が怪しむ事はもう今のうちで計り知れた
「...昨日どうやってあそこから出た?その包帯はどっから持って来た?どうやって部屋に戻った?全部答えろよ」
一気に投げ掛けられた質問に頭の中が真っ白になる
それと同時に、廉を欺けるだけの嘘が、言い訳が、自分の中にないことも分かった
廉は黙り込んでしまった新に近寄り胸倉を掴む
そのまま押し込み、壁に新を抑えつける
ダンッ!と音が鳴り、勢いよく背中を打ち付けた
廉は胸倉を掴む手をそのまま喉に押し付け圧迫する
かはっ、と苦しげな声を漏らす新は喉元にかかった廉の手に自分の手を重ねる
「俺に嘘付くなんていい度胸だな」
廉はそう呟いて胸倉を掴んだまま新を床へ投げ倒した
そして手を出せずに床に身体を打ち付けた新に馬乗りになる
「全部言えよ、調子に乗ってんじゃねぇぞ」
廉は決して声を荒げない
いつも静かに、低く、呟くように脅しをかけてくる
調子乗ってるわけじゃない...
心の中ではそう言えても口には出せない
新が唇を噛み黙っていると、廉はその頬に拳を入れた
声を荒げない廉だが、顔を殴る時は冷静ではなく、感情的に怒ってる時だと新は知っていた
普段は首から上は目立つからあまり殴らない
特に月に一度、帰ることができる期間がある時は尚更だ
だから今、相当頭にきているのだと察しがついた
「...ご、めん...な、さっ....」
腕を顔の前で組み、許しの言葉を使う
それが廉に届かないとは知っているけど、それ以外に言えることがない
「謝るくらいなら答えろよ」
両手首を掴まれ床に押さえつけられる
廉の睨みつける目にいつも殺されるのではないかと思う
今も殺意を持った色をしている
だけど、言えない
言いたくない——。
怖くて目を瞑った新の耳に、部屋のドアが開く音が聞こえた
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