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存在を知る者
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「...おはよ、隣...いいかな?」
壁を背に体育座りをする彼へそう問いかけるが返事はない
嫌われる原因とかあったかな、と自分を振り返るが当てはまる点がまるでなかった
あまり話したりしたくない、そういうのが苦手なタイプなのだろうと思い、平謝りしてそこを離れようとした
その時——
「....なんで新の事知ってるの?」
背を向けた悠へ彼の声が初めてかかった
振り返りながら「え?」と聞き返した悠は、彼の少し尖った瞳と目があった
聞き取れていなかったわけじゃないけど、質問された内容に一瞬で頭が真っ白になった
「....あんた、転校生だろ...。新とはクラスも違うのに、何であんたが新の事分かるんだよ...」
不服そうな彼の態度を見て、これが自分と話してくれない理由なのかなと頭の隅で感じた
だけど、それより——
「...新の事分かるのか...っ?」
クラスの誰1人として知らないと言った新の存在を、否定せずに分かると言ってくれた事に驚きを隠せなかった
思わずまた側により、彼の前に座り込む
「...っ、何...気持ち悪いな...。聞いてるのは俺の方なんだけど...」
目の前に悠が座ったことに嫌悪感を剥き出しに顔を顰める
だが悠はそれどころではなかった
新を無視せずに、知っている人がいるという事実が、心の底から嬉しかった
「ねぇ、君の名前は...?俺は、瀬戸悠。新の事知ってるなら俺に色々教えて欲しい...っ、」
向こうが質問して来た内容なんて頭に入ってなくて、その事実があるなら、新をもっと知りたいという思いで頭はいっぱいだった
だが、こちらの問いかけに応じず、初対面のやつに一方的に話しかけられて相手はいい気分はするはずがない
彼は顰めた顔を一層嫌悪感に染めながら、立ち上がる
「....名前なんか、教えない...。新の事も絶対に教えない...。あんたが何で新を知ってるか知らないけど、彼に安易に近づくなっ...」
ひとりごとのように小さな言葉だったが、その裏に秘めた強い思いが感じられた
悠もそう言われ、言い返す言葉もなく、自分から離れていく彼の背中を見つめるだけしかできなかった
確かに彼のいう通り、新に容易く関わってはいけない気がする
だけど悠はそんな軽い気持ちではなく、彼をしっかり守ってあげたいという気持ちがちゃんとあった
もし今さっきの彼が、新について何か知っているなら、自分が上辺だけでなく真剣に新を守ろうとしていることを伝えてなくてはいけない
そうじゃないと、何も情報がない
何年生で、何組なのか
いつもどこにいるのか
何で1人になろうとするのか
どうして学園のみんなに無視されるのか
授業が始まるチャイムがなり、整列したクラスのみんなの元へ急いで戻る
普段なら楽しみで仕方のない体育の時間だったが、今の悠にはただ退屈で、早く終わって欲しいと願うばかりだった
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