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新参者
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朝から教室が賑やかだと思ったら転校生がやってきたみたいだった
クラスのみんなはその彼の周りに群がり、作られた笑顔で会話をしていた
何も知らないんだろう
彼は笑顔で会話をしていた
バカなやつ....
どうせみんなと同じ、この学園を乗っ取った奴らの言うことだけを聞いて生きていくんだ
俺はあんなやつと関わりたくない...
そう思っていた
「...新って子、知らない...?」
自分の耳を疑った
なんであいつが...転校生してきたばかりのあいつが
新の事を知っているだ...?
だけどクラスのやつらが答えるはずはない
ほら。誤魔化して、新を無い者のように扱ってる
それに気づいてないのか
彼はまた作られた笑いの中で笑顔を作っていた
関わりたくない...気色悪い...
そうは思うけど、何で新を知っているのか気になる
あんなバカなやつに、新を関わらせたくない...
歩が悠を気にしてチラチラと見ていると、何度も目が合うようになった
何でこっち見るんだよ...気持ち悪....
そんな気持ちで向かった体育館で、あいつは俺に話しかけてきた
こっちが聞いてることはガン無視で一方的に話しをしてくる悠を、一瞬にして嫌いになることができた
新を知りたいとか...ふざけるな....
....俺だって、今の新の考えてる事なんかわかんないし...
昔みたいに話したいけど、きっともうそれも.....
何も知らない奴が、新に簡単に関わろうとするのが気にくわない
全てを知ればきっと、絶対、クラスの奴らみたいに寄ってたかって新を虐めるんだ
そんな思いが胸中を埋め尽くして、あいつの言葉なんか入って来なかった
冷たく突き放したからきっともう話しかけてこないだろう
授業を受ける気になれず仮病で見学していたら、頭が悪いのか、あいつは俺に声をかけて来た
なんで話しかけてくることができるんだこいつは....
名前を聞かれて、答えるつもりなんてさらさら無かったのに、あいつが悲しそうな顔するから言ってしまった
でもどうせクラスも一緒なら俺が言わなくたってバレてたわけだし、気にしないで大丈夫...
早くどっかいけよ...
そう思っていたらまた話は新の話題になっていた
俺が最初に聞いたこと、答えてもらってないのに...
不服そうに呟くとこいつはすんなり話し始めた
あ、なんだ...隠してたわけじゃ無いのか....
新との出会いを回想する彼は、自分のことのように心を痛めながら話をしていた
新がいじめられているのを知っているのか...それに助けたいとも...
何もできずに自分の無力さに苛立って...
変な奴じゃ無い...かも...少なくともクラスの奴らとは...違う...
歩自身も、新を助けたいと日々思っていた
でもこの学園で行動を起こすのはとてもじゃないが厳しくて、いつも離れた場所で見守ることしかできなかった
でもそれは何1つ新の為にはなっておらず、ただ逃げているだけ
だからせめて、新を虐める奴らや学園の犬となった奴らと連まないことで、自分は新の味方なんだと、届かない意思表示をしていた
たぶん、こいつも一緒なんだ...俺と...
そう思ったのに
『殴ってたやつがいなくなってからしか行動できなくて...』
いなくかってからしか行動できなかった...?
てことは...
いなくなった後は行動、できた....?
新と、話したの...?
『...話したよ。でも....新は何も教えてくれなくて...俺に構うなとしか.......でもきっと——』
何で.....っ、
俺は、もう...新と話すことなんてできないのに....っ...
同じだと思っていたのに
全然、違う...っ....
何で...転校してばっかのお前なんかが...
俺の方がずっと前から、新のこと.....っ...
新は俺を避けてる
関わらないように新がしているから、助けることも不可能だ
そして新は1人を望んでいる
それを押し退けて、新の思いを無視してまで、
助けることが彼の為なのか
でも心の片隅では、自分がそれを理由に逃げているのもわかっていた
一番無力なのは、俺の方だ...
だからこそ、「ただ助けたい」というそれだけの理由で、新の思いを理解せず突っ走る彼が羨ましく、また妬ましかった
そんなの、俺にはできない.....っ....
新の事を教えて欲しいと言われるが、さっきとはまた違う理由で新と関わらせたくないと思った
助けるのは俺だけでやりたい
あんたなんかに新を取られたくない
歪んだ感情だというのはすぐにわかった
でも新参者に先を越された悔しさや、自分にないものを持っている彼が羨望と嫉妬の対象になってしまい
また新には届かない場所で、新の味方面をしてしまった
感情が一瞬でグチャグチャになって、なぜか涙が溢れる
見られたくない
そう思ってその場を離れようとしたのに、腕を掴まれた
触るな...っ、あんたなんか、嫌いだ....っ
振り返りながら睨みつけた気持ちだったが、あいつの驚いた顔を見る限り、泣いてるところ見られたかもしれない
振りほどいてここから立ち去る
一番卑怯者で弱虫なのは俺の方だ....
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