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初対面
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2時間目が開講されるが、歩の存在がないことに気付いたのは教室についてすぐだった
鞄は置いてあるから、授業をサボったか何かだろう
さっき俺があんなこと言ったからかな...
純粋な気持ちであったのは事実で、新を知っているならそれを分かち合って、二人で彼を守ろうと思ったのだが
それが逆に歩を傷付けてしまったのを今更気付く
理由なんか知らないし、傷つく意味もよく分からないが
歩の目は泣いていた
ただその事実がある限り、悠は加害者だった
反省はしているが、それでも歩のことが気になる
そんなことばかり考えていたからか、午前の授業はあっという間に終わり昼食時間となっていた
いつものようにクラスのみんなが声をかけてくるが連む気持ちになれず、お腹は空いていないと、やんわりと断る
教室で一人になって席に座り、机に突っ伏す悠の頭上から初めて聞く声が降ってきた
「瀬戸くんはお腹空いてないの?」
顔を上げたそこには全く見覚えのない男子生徒の姿があった
手にはぶ厚い本が抱えられ、メガネをかけた顔を困らせたように笑った
「あ、たぶん僕のこと知らないよね...一応一緒のクラスなんだけど...」
悠の困惑した顔を見て、少し傷付いたようにして、また困ったように笑う
「...え、あ、本当...!?ごめん、俺まだみんなの顔覚えてなくて」
同じクラスという言葉に驚き、頭を掻きながら平謝りをする
正直本当に見覚えがなくて申し訳ない気持ちでいっぱいになるが、目の前の男子生徒は首を横に振り、優しく微笑んだ
「大丈夫だよ。僕、人とあんまり話すのが得意じゃないから... いつも教室の端っこで本ばっか読んでて...」
だから僕のこと知らないのもおかしくないよ、と眉を下げながら笑った
「そうなんだ...本が好きなの?俺、あんまり本とか読まないから、おすすめの本があったら今度教えて欲しいな」
人と話すのが苦手だと言った彼から話しかけたくれた事が嬉しくて、悠も微笑みながらそういうと右手を差し出す
「知ってるとは思うけど...俺は瀬戸悠。君の名前は?」
悠の差し出した右手をじっと見つめた後、彼は本を片手に抱え直しその手を握り返した
「僕は...笹本春。よろしくね、悠...くん」
春は躊躇いがちに悠の名前を呼んだ
「うん!よろしくね!春!」
悠は笑いながら握手した手を上下に振る
春もどこか照れ臭そうに、だが満面の笑みを見せた
このクラスで初めて友達を作れた気がした
でも、春もみんなのように何かを隠したりするのか
新を無い者のように扱うのか
ふとそんな疑問が頭をよぎり、握手を終えた悠は顔を曇らせる
歩のように新を知っていると言うなら、俺は春と友達になりたい
でも、春も他のみんなみたいに隠すんだったら...俺は...
顔を顰ませ、下を俯く悠に気づいた春は不思議そうに首をかしげる
「どうしたの...?悠くん...?」
春の言葉に我に返る
見上げる春の顔はキョトンと目を丸くさせ、無邪気そうな瞳で悠を見つめる
悪い奴ではない...はず、きっと。
間が空いて口を開く悠を春は静かに見つめていた
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