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集団暴行
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角を曲がる寸前に一息置くために立ち止まる
転校初日だから
変な印象だけは持たれたくないのが本心
おどおどしたり
ニヤニヤしたりしないように頬を軽く叩いて覚悟を決める
その一歩を踏み出そうとした
その時
1人の生徒が地面を転がっていくのが見えた
...え?
その生徒は勢いよく地面を転がり
校舎の壁に思い切り背中をぶつけた
苦しげに噎せる声が悠の耳に届く
何が起きてるんだ...?
もう一度そこを覗き見し、状況の掴めないこの場を
整理しようと頭を働かせる
壁にぶつかったのは1人の男子生徒
地面に蹲る彼を2、3人の同じく男子生徒が取り囲む
1人が髪の毛を掴むと上に引っ張り
もう2人は脇を抱えて強制的に立ち上がらせている
力が入らないのだろうか
無理やり起こされた彼の脚は自分の体重を支えることができていない
膝を曲げ、両脇の男子生徒に抱えられて立っている
『自分で立てよ、おらっ!』
悠とその集団との距離はあまり遠くはないが声が少し聞き取りづらい
恐らくこの場を動かなければバレることはないだろう
先ほど髪の毛を掴んだ男子生徒はイラついているのか
声を荒げてそう言い放つと
自力で立つことのできない彼の鳩尾に拳を入れる
『...ぅ”ぐっ!』
悠が今までに聞いたことのないような嗚咽じみた彼の声は、悲痛なほどに耳に残り、塞ぎたくなるような衝動に駆られる
両脇を支える2人の手が離れると彼はまた地面へ倒れこむ
悠からは見えない角度にいた他の男子生徒が蹲る彼の元に集まり、その数は7人もいた
頭を踏んだり、背中を踏みつけたりと抵抗のない彼への暴行はまだ続いていた
...助けなきゃ...っ...
そうは思うが初めて見る集団暴行を前に、悠はただ1人呆然と立ち尽くすことしかできなかった
正直、怖い
だがそれは当たり前だ
同い年に近い1人の生徒が集団の中で殴られている光景を見ることなんて現実的じゃない
あってはならないことだ
自分の身に起きている事ではないが、自分の事のように感じるこの恐怖心は人並み以上だった
それを彼は1人で抱えているのだ
だからこそ助けたい
悠は胸中の葛藤を繰り広げるが、やはり恐怖心が強く、動くことができない
その間も集団の生徒からの暴力行為は止まらない
至る所を蹴られ、殴られ、その度に彼が漏らす悲痛な声に、オーディエンスの生徒らは歓喜の声をあげる
異常だ
自分がここまで勇気がない情けないやつとは知らなくて、無力さに拳を握る
だが握るだけしかできない
集団の生徒の中の1人がぐったりとしている彼をまた無理やり起こし、壁を背に座らせるとしゃがみこむ
何か小さな声で話をしているようだが何を言っているのかここからでは分からない
そして彼の首に片手を伸ばした
まさか、殺す気なのか...!?
悠は目を見開いて1人焦る
彼の苦しそうに歪めた顔が目に焼きつく
しかしそれは絞首してるというよりは、力強く首を掴んでいるように見えた
けれども呼吸が苦しくなるのは前者も後者も確実だ
彼にそれを振りほどく力が残ってるはずはなくその両腕はだらりと下がり、困難となった呼吸をしようと必死のようだった
『...お前なんて....だ...く......死ねよ』
首に掴みかかっている男子生徒の言葉が途切れ途切れに聞こえ、死ねという言葉だけは確実に聞き取れた
...酷い....
悠は無力にも唇を噛みしめる
薄眼を開けていた彼の両目が力なく塞がっていく
それを確認したかのように、首を掴んだままその手を右に振る
身体の軸がぶれた彼の身体は、そのまま手を着くことなく地面へ降り倒された
その生徒は立ち上がると後ろを振り向き低くこう呟いた
『....捨てて来い』
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