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崩壊4
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「晴、今日早く仕事行かないといけなくてさ…もう家出るな」
時計を見るとまだ5時。
カーテンは開いていたけど、まだ外は暗かった。
「お兄ちゃんもう行くの?」
「ごめんな。まだ辛かったら学校休んでてもいいから。ね?行ってきます」
お兄ちゃんは、僕の頭を乱雑になでて、足早に去っていった。
出るの早いよ…
そう思ったけど、急いでたし、
ギリギリまで行くの待っててくれたのかな?
なんて。
本当、優しいお兄ちゃん、
大好き。
それから何となく眠れず、いつの間にか学校に行く時間になっていた。
でも、やっぱり1人じゃ勇気でなくて…
しかもお兄ちゃんに「休んでもいい」って言われたこともあって、
学校に向かえなかった。
まだ辛かったって言えばいいかな…
『ごめんなさい、お兄ちゃん』
それから、何時間もお兄ちゃんは帰って来なかった。
待っている途中で寝てしまって、「いけない!」と起きても、お兄ちゃんは居なかった。
ガチャ
帰って来たのは、日付が変わって朝を迎えたころ。
「おかえり」
話しかけても、全くの無視だった。
でも、朝から何も食べていなくてお腹がすいていたことと、
構って欲しい思いで、僕は嘘をついた。
「まだ具合良くなくて…だから…ケホケホ」
座り込んでお兄ちゃんを見上げると、
聞いたこともないような言葉が浴びせられた。
「だから?だったら何?」
信じられなかった。
僕のお兄ちゃんは優しくて、笑顔で…
困るくらいの過保護だったのに…
「お兄ちゃんだったら弟の看病しないといけないの?
そんなの誰が決めた? お前の… 何でもない。 」
それだけ言うと、お兄ちゃんはすぐに家を出て行った。
僕はただ、人の居なくなった玄関をぼーっと見つめるだけだった。
「…っゲホゲホ…はぁはぁ…ゲホッ」
止まらない咳に悩まされながらも、僕は毛布にくるまって、寝ようと必死だった。
寝て起きたら、お兄ちゃんがいるかもしれないから。
さっきのが、全部『夢』だったのかもしれないから。
だから…
ーーー
意識を飛ばす刹那、僕の脳内では、ある言葉が繰り返された。
「おやすみ、晴」
それは、優しい優しいお兄ちゃんの声だった。
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