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「…理由はないって、」
「面倒だっただけ。色々と」
「…それって、僕が嫌いだから、一緒にいて取り繕うのが面倒だってことですか?」
言った。言ってしまった。この返事がイエスだったら、僕立ち直れないかもしれない。
「…ちげぇよ。別に、篠宮のことは嫌いじゃない」
「…でも、だって、あの日…僕のこときつい目で見てたじゃないですか…」
「…あれは」
そこで、高畑君は言葉に詰まった。
ほら、やっぱり、僕のこと嫌いなんじゃ。だから、答えられないんでしょ…?
「嫌いじゃねぇよ、確かに。でもお前は、俺らには関わらない方がいい」
「…なんでですか?」
「分かってると思うけど、俺らは俗に言う不良だ。しかも、そこら辺のガキと違って、お遊び程度のことしかしてないわけじゃない。」
「…そんなに言うほど、僕には高畑君達が悪い人には見えません」
確かに、見た目は怖いけど。だけど、以外と純粋で、素直で、年相応な彼らの一面を知っている。
しょうもないことに夢中になったり、無邪気に笑うところを僕は一緒に体験してしまった。
「お前にはそういう風に映っても、世間じゃそうはいかねぇんだよ。外に出りゃ俺らは立派な厄介モンだ。ちょっとヤンチャしてました、じゃ済まねぇんだよ」
「周りにそういう目で見られるから、だから、なんなんですか…?僕は、僕は…!そんなこと気にしません…!」
「そんな風に言ってられるのも今だけだ。俺らって一緒に外に出たりあんましねぇから、そのときに受ける視線、お前知らねぇだろ。」
「そんなことない…!確かに僕は、みんながどんな風に思われてるか、体験した訳じゃない…けど、だけど!そんなの、気になんかしません!」
いつも高畑君がふざけているように伸ばしている言葉尻は、いつしか普通になっていた。
「口先だけだ」
「そんなことない!」
「周りにそういう目で見られるのって、案外きついもんなんだよ」
「分かってます!」
「分かってない」
「分かってる…」
「分かってないって」
「分かってるよ…!」
だって。
だって。
だって。
だって、僕だって。
ある意味で、世に言うはみ出し者だから。
「僕だって…!!その視線のきつさくらい知ってる…!でも僕は、そんなのどうでもいいって思えるくらい、みんなといた数日が楽しかった…!」
「………」
「初めてだった…あんなに笑ったり怒ったり、人といて楽しいって思えたの…」
「篠宮、」
「僕のこと心配して遠ざかっていくなんて、嫌だ…!そんなの、嘘だ…!僕が一番辛いのは、みんなと離れちゃうことなのに…!」
「………」
「嫌いになったなら、はっきりそう言ってくれたらいいじゃないですか…!」
嫌いじゃないって、言ってくれたのに。その言葉を疑っているわけじゃないのに。
なのに、どんどん言葉が止まらなくなって、胸の内に溜めていたものを全部吐き出してしまう。
それと同時に、苦しくなった。
いろんなことを思い出して、昔の記憶が頭の中に流れて、どんどん息が出来なくなって。
「…っ、ふ、はぁっ、はっ、」
「ちょ、落ち着け!おい、いいか、ゆっくり息吐け、そんでゆっくり息吸って」
「う、ぅ、っ、は、は、は」
「ほら!」
テーブルの上にあった袋を口元に宛がわれて、背中を擦られる。
自然と呼吸はゆっくりになって、心も落ち着いてきた。
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