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授業中も、休み時間中も、周囲の視線が気になってしょうが無い。教室にいる人の殆どが僕たちを見ているのだ。
昨日買い物に出かけた時にも思ったけど、恭哉君達はいつもこんな風に注目を浴びているのだろうか。
まるで芸能人みたいですごいな、と思う反面、疲労感が半端じゃないだろうな、とも思う。
その視線が好意的なものならまだしも、その反対であるものもきっと少なくない。
ミチル君も言ってたもんな。外で、社会で、俺たちがどんな風に見られてると思ってるんだって。
さっきの生活指導の先生みたいに、髪を染めてたりピアスを開けたりしているだけで、その人の人間性まで否定してしまう人なんて、大勢いるのだ。
先生の言いようは本当に酷かった。クズなんて、教育指導者が生徒に使う言葉じゃ無い。
恭哉君もミチル君も、根っこの部分は優しくて、温かくて、穢れの無い人たちだ。
どうすれば分かってもらえるんだろう。この人達の魅力を、どうすれば伝えられるんだろう。
大切な人を侮辱されることが、こんなにも悲しいなんて思わなかった。
でも、僕は決めたから。
ミチル君が忠告してくれたこと、忘れていたわけじゃ無い。
周囲の評価がどうであれ、僕はみんなのことが好きだし、全てを受け止めるって、決めたんだから。
だから、僕はこの苦しさから逃げたりしない。
「久々に一日授業受けたわ~」
「…長ぇ」
なんとか一日を耐え凌ぎ、今日も今日とて音楽室で放課後を過ごす。
いつもならこのままダラダラして、適当な時間で帰るところだけど、今日はみんなに提案があるのだ。
「みなさん!ちょっと聞いて欲しいことがあります!」
「わざわざ改まってどうしたんだ?」
「僕、今日のことやっぱりムカつきすぎて許せません!」
「…え~?朝のやつ~?悠里って案外根に持つタイプなのね」
「朝なんかあったん?」
「ちょっと清水とトラブってさ~」
そうか、あの生活指導の先生の名前は清水っていうのか。
許しませんよ、清水先生!!
「許せないって、何かやり返したりするってこと?」
わくわくした表情で紫乃君がそう聞いてくる。
そう、確かに僕がこれから提案することは反撃である。でもきっと、紫乃君が思い浮かべているような反撃じゃ無いけど。
「そうです!みんな、真面目になってぎゃふんと言わせましょう!」
「……俺パース」
「「俺も」」
「俺は―…ハハ」
「………」
クッ…。みんなやっぱり乗ってこないか。そんなことだろうとは思った。
ここですぐに納得するようなら、そもそもここまでサボり魔にはなっていないだろうし。
「ねぇ!頑張りましょうよ!クズとまで言われたんですよ?!そんなの絶対、ぜーーーーったい嫌です!」
「まぁ俺ら実際クズみたいなもんだし?異論無しだわ~」
「清水、クズって言うの口癖なんだよ」
「アイツと顔合わせたら高確率で言われるよな。97%くらい」
「なんでみんなそんなどうでも良さそうなんですか…。気に食わないんです!」
「そりゃまあムカつくっちゃムカつくけど」
「大して気にすることじゃないって~」
ダメだこの人達…。コテでも動かない気だ。なんでそんなに興味がなさそうなんだろうか。
「アイツらなんか俺らの人生の中で、大して重要じゃないじゃん。通行人Cくらいだよ。そんな奴の評価一々気にしてたらキリなくない?」
「そうかもしれないけど…。でも、みなさんのこと悪く言われるのはやっぱり腹が立つんです!」
「なんでお前さんがそこまで怒るかねぇ」
そんなの、怒るに決まってる。自分だって清水先生に僕に謝るように仕向けたのに。
僕のことでミチルくんだって、怒ってくれたのに。
「じゃ、じゃあ、とりあえずの目標を立てましょう!ね!」
やっぱり、この今の生活を続けていて、いきなり毎日授業に出ましょうっていうのは難しいかもしれない。
少しずつでもいいから、普通の高校生活に慣れていくことが大事だと思う。
「目標って?」
「んー…あ、そうだ!今度の学年末テストで、みんな三十番以内に入れるくらいには、授業に出るとか!」
やっぱり、成績って大事だと思うんだ。それは評価的な意味でも、成長的な意味でも。
データには残るから、あんまり酷いものを取ると最悪進級にも影響しちゃうし。
それに、良い成績が残せたら、それが嬉しくてもっと頑張ろうって思えるから!
「五十番以内ねぇ」
「まーそれなら乗ってやるよ。その代わり、一番順位低かった奴一回晩飯奢りな」
「いいでしょう!夜ご飯をかけて勝負です!」
みんなが案外アッサリ承諾したことに拍子抜けしたけど、良いことだ。
これをキッカケに、みんなが授業に出るようになれば良いけど…。
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