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紫乃君、金髪だったんだ。今は、色素の薄い人の地毛みたいな、ナチュラルな茶色だから想像も付かない。肌が白いし、きっと似合うんだろうけど。
親に染められた金髪、その言い方にまた胸がチクリとした。
自分がしたいと望んだことでは無く、勝手に操られるがままなんだ。子供なんて、そんなものだ。
僕は昔から良く、早く大人になりたいと思っていた。
「そんなこと言われ続けると、じゃあご希望通りグレてやるよって思った。んで、その後みんなにも出会って、一緒に悪戯ばっかしてたな。みんな何かしら問題抱えてたから」
そっか。最初はみんな、小さな子供の必死な抵抗だったのかもしれない。抗えない何かによって溜まるストレスを解消しようと、悪さをしていたのだろうか。
「気付いたら、周りが俺らを敵に見てた。変に慕ってくる奴もいたりしたけど、とにかくもう子供の悪戯じゃ済まない所まで来てた」
「………」
「そんな馬鹿ばっかしてる中で、俺らと本当に仲良くなってくれる人たちはみんな似たもの同士だった。辛いことがあって、乗り越えようと、抵抗しようと必死な奴ばっかだった。だから、俺たちはもうそれでいいやって。俺たちのことはお互いが分かってるから、周りなんて気にする必要なんかないって思えたんだ」
「…素敵な関係ですね」
そこまで信頼できる人がいてくれること、それは本当に稀なことだと思う。みんなそんな相手が欲しくて、必死に人付き合いをしているんだと思うから。
「…でも。周りの奴はそうもいかなかった。俺らがヤンチャしなくなって一ヶ月くらい経ったとき、結託したいくつかの敵対グループに襲われた。一人か二人でいるところを大勢がリンチされたんだ」
「…そんな、なんで」
「喧嘩して負けた奴の逆恨みとかなら、まだ分からなくも無い。けど、別にそうじゃなかった。ただ単にアイツらはここ周辺の学生を負かして天下取りしたかったって、そう言ってた」
「無抵抗な人間にまで、暴力を…?」
「うん、俺らだけじゃ無かったよ。そのとき思った。あぁ、やっぱりこの街は終わってるなって。こんなイカれた野郎ばっかがデカい顔してのさばって、まるで暴力こそがルールのような場所だった」
ようやく周囲を気にしなくていいと思えるようになるほど癒えた心の傷を、穿り返される気分だったんじゃないかな。
大切な仲間を傷つけられて、やり返そうにもきっと紫乃くんは暴力が好きじゃ無いし、葛藤して悶えたことだろう。
「でも、そのとき恭くんが言ったんだ。この街を変えるって」
「街を、変える…」
「そう。束ねるものがいれば、少しはマトモになるだろうって。暴力がルールであることが嫌だったら、俺たちがルールであればいいって」
それはつまり。
”俺たちが、この街を纏める”
「すごいよね、そんなこと言っちゃえる恭くん。しかもアイツが言うから妙に説得力があるし、格好良いから妙に様になるし、ちょっと腹立ったよね」
アハハ、恭哉君のことが大好きだと書いてあるような笑顔で紫乃くんは笑った。さっきの渇いた笑いとは大違いで、なんだかホッとする。
いくつも有名な不良校のあるこの地区を纏めるのは、簡単なことじゃないだろう。
現にこの前だって、初めてだったけど、みんなが喧嘩しているのを見たし。
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