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1-18 誰の声?
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「ちょっとここで休憩っ」
僕は白いベンチに腰掛け、楽譜を見ながら膝のうえで指を動かす。
ピアノの鍵盤とは全然違うけれど、指の動かし方のイメトレにはなる。
何より、先生が言っていたことの咀嚼だとか。
"心をこめて"。
先生が楽譜に書いたコメントの小節までさしかかったとき、誰かが歩いてくる音と声が聞こえてビクリとした。
ここで誰かと会うのは初めてで、ちょっと身構える。
誰だろう。なんとなくこの声、聞いたことがあるような…
「あのなあ、カケルには関係ねえだろ」
ー
「あ?知らねえし。そんなん適当に風紀にやらせとけよ」
ー
「じゃあ俺の親衛隊にでもいいんじゃねえ?あいつら喜んでやるだろうよ、俺に心酔した連中ばっかりだから」
ゆっくりと、大またで歩いてきたその人は電話で話しているようで、とてもイライラしているのが何も知らない僕にも分かった。
ドカリと彼は僕の座っていた白いベンチに腰掛ける。でもそこは、僕の隣ではない。
(隠れちゃった…)
そう、僕はベンチから立ち、咄嗟に近くにあった茂みに身を隠した。その人は一組しかないベンチの真ん中に腰掛けて話している。
「この話は終わりだ。切るぞ」
一方的に電話を切ったらしい彼は、ぐぐぐと両腕を上に伸ばした。
「あー、どいつもこいつもうぜえ」
…うわあ。口が悪い。思ったとおりだ、と僕はふむふむ頷いた。
そう、この声は間違いない。
響会長だ。
「ちっ、また電話かよ。はい、園田。あー、今からすぐ戻る。」
(やっぱり…)
いま、園田って言いましたよね。確信。
このひとは響会長のようです。
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