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1-46 独りよがり
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あれからもう半年経った。
それとも"まだ"半年…?
僕はちゃんと前に進んでいる。と、思う。
友達のいなかった中学時代とは違う。
中学に入りたての頃、僕は逃げるようにピアノの練習に没頭していた。
内気で話し下手で、自分のおもったことを伝えるのが苦手な子どもだったから、そうなることは予想できていたことだったし、
全寮制のこの学校を受験すると言ったときに両親があんなに反対したことにはとても納得できる。
予想どおり、僕は学校に馴染めなかったし、友達と呼べるのはピアノくらいで、今以上に"心をこめて"と先生に言われていた。
「心をこめて」。
僕には、こめる心がなかった。
そんな僕を変えてくれたのは、一哉だったと今でもはっきりそう思っている。
彼の通う中学が、僕が出るコンクールの会場に使われていたのは偶然だったし、
手伝いとして渋々会場に一哉がいたのも偶然だったし、
僕が弾いた曲を彼が気に入ってくれたのも偶然だった。
僕がそれを、運命と呼んだだけ。
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