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1-51 ほんとのきもち
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「でも雪ちゃん、すごいね。外からこんな閉鎖的な学校に飛び込んでくるなんてえ」
「あはは、そうかな」
「外部の中学ってどんな感じだったあ?この学校と全然ちがうのかなあ」
「んー…、楽しかったよ。総合的に言うと」
総合的に、って。雪ちゃんおもしろいなあ。
「匠くんは?中学からここ?」
「うん、僕ね、中学のときにピアノの特待試験受けて入ったのねえ」
「え、すごい。たしかにさっきのピアノ、すごく、きれいだった」
「うそだあ、寝てたでしょお?」
「夢の中でね、何の音だろうなーって、思いながら聞いてたよ。すごく上手」
「ふふふ、そっかあ、ありがとお。いい先生にも出会えてね、満足しているの。
でもね、僕、"外"もあこがれてたんだあ」
外に逃げたかった、って言う方が正しいのかな。
「まあ、もう僕は"外"には出ないと決めたのだけれど」
思わずそう付け足すと、雪ちゃんはだまって僕を見つめた。その瞳は、なんだかゆらゆらと揺れている気がした。
なんでかな。誰にも言ったことがないことなのに。雪ちゃんのことあまり知らないのに。
むしろ、知らないからなのかな。一哉からのメールで、今の僕はおかしいんだ、きっと。
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