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2-7 学校という場所
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「…久しぶりだな。髪伸びたろ、身長は伸びてねえけど」
「一言余計!でも髪、いい感じでしょお?」
「ああ、似合ってる。」
「、」
「しかもすげえサラサラ。可愛いよ」
一哉はいつもそうだ。褒め言葉をするりと、自然にくれる。
初めて会ったときも、僕のピアノをすごいすごいと褒めてくれて。
素直じゃない僕とは大違いで、そういうところは好きだったけれど、同時にうらやましくもあった。
「友だち、できたんだな」
「うん、そうなのお」
「よかった、楽しそうで」
「、」
心底、僕に友達ができてうれしいという顔をする一哉。
そうか。
彼は彼なりに、僕に友だちがいないことを気にかけていたんだなと今更おもった。
毎週のように街におりて、外がたのしいという僕はきっと、はたからみてもさみしいやつだった。
今考えてみると、彼がよく言っていた「学校どうよ」はそういう意味だったのかもしれない。
学校はたのしいか?友だちは出来たか?試験はどうだった?そういう、意味。
けれどそのたびに僕は、ピアノのレッスンの話だとか、コンクールの話をしていたのだけれど。
あの頃の僕にとって学校は、ピアノを習うところだったから。
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