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2-34 コンクール
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『匠くん、次のコンクールに出てみないかな。僕は君を推したいと思っているのだけれど。』
『コンクール…』
『開催は夏だよ、だから少し時間があるね』
『…考えて、みます。ちなみに場所は、』
『あぁ、たしか前に一度行ったことがあると思うよ、
この山を降りて少し電車に乗ると大きな街があるだろう、そこの中学校を借りて開催するらしい。』
あぁ、それは一哉の母校だ。
そして、僕と一哉が出会った場所でもある。
『いい返事を待っているね』
先生のその言葉で、レッスンは終わった。
出るか出ないか。その返事を、僕は次のレッスンでしなくてはいけない。
出たいか出たくないか。それで言うなら僕は出たい。先生の期待にこたえたい。
だけど、出られるか出られないか。
そう考えるとどうだろう。
僕は街に降りられない。
学校の外のことを考えると頭が痛くなる。
街へ降りようとすると過呼吸を起こす。
そんな風に未だに縛られている僕が一哉の母校でピアノを弾けるだろうか。
『お前のピアノ、好きだよ』
一哉が唯一自分から好きと言ってくれたのは、後にも先にもあのコンクールでの僕のピアノ。
だからこそこわい。
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