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快晴〔4〕#兄
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「お前が付き合ってたのってデザイン部の高橋だったの
かよ…。そりゃ捨てられる訳だ。」
話によると、昨日はご自慢の恋人の誕生日であったらしく、他に好きな男が出来たと、ご丁寧にプレゼントを受け取られたうえで別れを告げられたのだと言う。
そんな元恋人が男社員から最も人気が有ると言ってもいいほどに名の知れた人物であるという事に驚き、納得した。
「なんだよ! そんなに俺に魅力がねーのかよ!」
「まぁ、そうなんだろうな。あの子仕事出来ねー上に男の
スペックと金にしか興味向いてねーじゃん。どうせ新し
い物件見つけて中流とおさらばしたって感じなんだろう
な。引きずるだけ無駄だ。早く忘れろ。」
「原元ぉ〜。ってめ〜この野郎!黙って聞いてりゃ…ふぇ
っ…っ…美羽ちゃんの悪口言ってんじゃねーよぉ〜!
しかも地味に俺の事ディスりやがって!! っ。」
事実を悪口だと受け取る程に陶酔する小坂に呆れと諦めを抱く。一昨年も同じような話しを聞いた気がするが、この男、つくづく女運というか、女を見る目が無いのだろう。
まだ出るのかと言わんばかりに何度目かの涙を流す同僚を余所に、どこか懐かし味のある色鮮やかな炊き込みご飯を口に運んでいく。
栄養バランスの考えられたおかず達、冷めてもなお風味の落ちない豊かな味。
なんだか久しぶりに
しっかりとした昼食をとっている気がする。
「……あんだけ嫌な顔してたのに
ちゃっかり仲直りしましたってか。」
「…別に仲直りってのはしてねぇよ。」
弁当箱の中を羨ましそうに見つめながら温もりのない量産品のサンドイッチを頬張る小坂。
嘘つけと言う様にやんわりと鼻を鳴らされるが、
決して嘘はついていない。
弟の気持ちには答えていないし、あいつを許した訳でもない。側に居ることを許可した。ただそれだけだ。
だが昨夜の選択は失敗だった。
いくら自分が弱っており流されてしまったからとはいえ、体までをも許すべきではなかった。
今朝のあの気色悪い笑顔…。
一応喝は入れておいたがあの様子だ。
事を大きく誤解しているに違いない。
思い出せば思い出す程にムカつきが増してゆく。
無意識に手に力が入っていたらしく、握っていた箸がバッキリと折れてしまった。
「っひぃ! へっ、何?! そんなに不仲だったのか?? 」
大きな音に反応した小坂がオロオロと様子を伺う。
「不仲でもねぇ。 …これ、残りやるよ。もう腹一杯。」
「えっ! マジで!? お前今日神だな原元!!
あ。お返しに食いかけのサンドイッチやるよ。 」
「だから腹一杯って言ってんだろ。
お前は一体何を聞いてたんだよ…。」
先程までの落ち込みが嘘の様にキラキラと瞳を輝かせる小坂。果たしてここまで単純な男が他にいるだろうか。
猛スピードで飯を胃に流してゆく姿を餌やりショーを観るかのようにただ呆然と眺めた。
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