アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
幸せ者〔5〕
-
日が沈み 暫くした頃に着いたのは
都内高級ホテル内にあるシックなフレンチレストラン。
どうやら既に予約をとっているらしく、兄が名前を伝えると一番奥にある小さな個室へと案内された。
「凄い…。こんなしっかりした所初めて来た。外資系に勤
めてるだけあって、無駄に金はあるよね。兄さん。」
「なんだ?馬鹿にしてんのか?俺が1人食ってるところを
指咥えて見させてやってもいいんだぞ。」
「 冗談デス。ゴメンなさい。」
「ふっ。 白々し過ぎるっつーの。」
そうこうしている内にテーブルの上に料理が運ばれ、曇り一つない閑静な輝きを放つ透明なグラスには 華やかに泡立つ黄色味がかった液体が注がれた。
「酒、初めてだろ? シャンパンは酔いが回りやすいから
気をつけて飲めよ。」
「うん。分かった。」
本当はお酒、初めてじゃないけど……。
兄さん、
俺は兄さんが思ってるほど
” お利口さん ” じゃないよ。
微笑みながら、心の中でそう呟いた。
「お前もデカくなったな。……
それじゃ、ハタチの誕生日おめでとう。乾杯。」
「ん、ありがとう。乾杯。」
兄の喉が軽くしなるのを横目で見ながら、
ゆっくりとグラスに口をつけていく。
” は じ め て の お さ け ” は、
今にも壊れてしまいそうな
どこか危うい味がした。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
21 / 54