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家
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お風呂から出た葵が自分の部屋で本を読んでいると、航から電話がかかってきた。
「もしもし?」
『もしもし、葵?』
「僕以外の誰がいるんだよ…」
『それもそうだな!』
あまり仲が良くなさそうである兄が帰ってくるという話を聞いていた葵は、いつも通りの航の声に安堵した。
葵と航は、時たまこうやって電話をすることがあった。
葵は最低限の事務連絡をするとき以外、電話をする必要はないというスタンスなので、大体航の方からかけることが多かった。
それもいつも突然である。
「どうだった?兄貴帰ってきたんだろ?」
『いやまあ、そうなんだけどさ』
「何かあったのか?」
『いや、無い。むしろ無さすぎるくらい無い。イギリスに行く前の兄貴と何も変わってなかった』
「変わってないと困るのか?」
『いや、そういうわけでもないな』
「ならいいじゃんか…」
ここで葵は、気になっていたことを聞いた。
「兄貴とは仲悪いのか?」
『え?なんで?』
「…なんとなく」
電話してる様子をずっと見てたなんて言えないな…
普通に考えて気持ち悪すぎだろ僕
『…普通かな』
予想とは反して、航から帰ってきた返事は平凡以外の何物でもない、当たり障りないものだった。
「そっか…」
『なに?兄貴のことが気になるわけ?』
「いや、そういうわけじゃないんだけどさ」
『?…まあいいけど』
「…そういえば、お前明日のテストいけそう?」
『は!?テスト!?!?!?』
「なんかあるらしいぞ、学期明けテストみたいなやつ」
『まじか!!!やべぇ勉強してねぇ!!!』
「だと思ったよ」
葵とは反対に、航は基本的に勉強はまったくしない。
馬鹿ではないが賢いわけでもない、航の学校での成績は良くも悪くも中の中というところだった。
ここからは、テストの山をはってくれだの何だのという航の情けない言葉が続くばかりだった。
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