アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
この日
-
「なんであいつが…」
航に部屋から追い出された張本人、真人は、リビングに戻ってきてからもどうしようもない感情に押しつぶされていた。
ソファに力なく座り、見ても聴いてもいないテレビの音が虚しくリビングに響くだけ。
「なんで…」
もう何十回かもわからない疑問を口にした時、リビングの扉が開いた。
「航…」
真人が恐る恐る扉の方に視線を移す。
そこに立っていたのは、たった今葵を送り出して戻ってきたばかりの自分の弟だった。
「なあ航…」
今まで力を無くしていた身体を無理やり立たせ、真人は助けを求めるように、航のもとへゆっくりと歩いていく。
そんな真人を航は無視し、まるでそこに誰もいないかのように歩き隣を横切ると、先ほどまで真人が座っていたソファに荒々しく腰をおろした。
「なあってば…」
そんな航の態度などまったく気にならないというように、真人は座ったままの航に話しかけ続ける。
「…兄貴には関係ないから」
やっとのことで言葉を発した航の声は、誰が聞いてもわかるくらいに震えていた。
「俺、部屋に戻るわ」
自分の震える声を振り払うように、矢継ぎ早にそれだけ言うと、航は自分の部屋に戻っていってしまった。
追いかける気力も湧かず、何もわからず、ただ呆然とする真人だけは、しばらくそこから動けずにいた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
22 / 26