アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
歪み
-
「…もう大丈夫か?」
航は心配そうに葵の顔をのぞきこんだ。
「うん…少し楽になった…」
弱々しいながらも少しは笑えるようになった葵の様子を見て、航は少し安心した。
「今何時間目…?」
「今は…2時間目がそろそろ終わるな」
「もしかして…ずっとそばについていてくれたのか?」
申し訳なさそうに表情を歪める葵に、航は何も心配ないとばかりに笑顔を向ける。
「俺も一緒に授業サボっちゃった!保健室の先生、外せない用事があるらしくて困ってたから、俺が面倒みるって名乗り出たんだよ」
「でも…」
「1時間目も2時間目も俺の嫌いな教科の授業だったからなー、いやほんと保健室の先生には感謝だな!!」
だから余計な心配はするな、とばかりに明るく話を続ける航に、葵は頭が上がらないほどの感謝をするしかなかった。
「ありがとうな…航」
「はは、どういたしまして」
外からは体育の授業が終わって校舎へ戻っていく生徒達の声が聞こえ、つまらない以外の何物でもない授業から解放された生徒達のざわつきが、校舎の中に少しずつ広がっていくようだった。
少しの沈黙のあと、航が口を開いた。
「…何か、あった?」
その航の言葉を聞いた瞬間、ほんの少しずつであるが赤みを取り戻していた葵の顔から、再びサッと血の気が引いていく。
「……」
「葵?」
「…何も無い」
口ではそう言うものの、「何か」があったというどうしようもない余韻が葵の言葉から滲み出ている。
虚勢を張ればはるほど、それは余計に色濃くなっていくだけだった。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
25 / 26